【 2005/5 】

オメガ3脂肪酸およびオメガ6脂肪酸、脳機能の向上に関与

高齢化時代を向かえ、アルツハイマー病など高齢者の脳機能の低下が懸念されているが、同様に児童の脳や運動機能にも異変の兆候が見られることが近年いわれている。

Pediatrics'05/5月号では、子供の発達性協調運動障害(DCD)とオメガ3脂肪酸などとの関連についての研究報告を掲載している。それによると、 オクスフォード大学の研究者グループが、5〜12歳のDCD患者117人を対象に6ヶ月間の対照研究を行い、被験者に、オメガ3脂肪酸およびオメガ6脂肪酸(6カプセル/日=エイコサペンタエン酸558g、ドコサヘキサエン酸174mg、γ-リノレン酸60mg)か、プラセボ(プラセボグループは研究期間半分で、サプリメントに移行)のどちらかを与えたところ、サプリメントグループでは最初の3ヶ月で、行動、読み書きに目立った向上が見られたことが分かったという。

また、ADHD(注意欠損多動性障害)という児童の精神発達障害も問題になっているが、これについては、大豆ベースの栄養ミルクが関連 しているという研究結果も出ている(NeuroToxicology誌)。 カリフォルニア大学アーバイン校の研究グループが、大豆ミルクには母乳に比べ80倍 のマンガンが含まれており、そうした高濃度のマンガンがADHD発症に関連すると 報告している。

研究では、ラットのエサにマンガンを250マイクログラムから500マイクログ ラムまでの範囲で混ぜて与えたところ、ADHDに関連すると考えられる発育不全 とドーパミンの低濃度がラットの脳内に見られたことが分かったという。 通常余分なマンガンは肝臓で排出される。しかしながら、生まれてから1年 位まではまだ、余分なマンガンを排泄する機能がしっかりしていないため、 脳の発育が阻害される可能性もあることが指摘されている。

大豆に含まれるホスファチジルセリン、注意欠損多動性障害(ADHD)に関与

ただし、大豆に含まれるホスファチジルセリン(以下、PS)が脳機能を高め、アルツハイマー疾患の改善、記憶・認識能力など脳機能の向上に貢献するという報告もある。ADHDの改善に関しても、3千に及ぶ学術報告があるといわれる。

PSは米、大豆、緑黄色野菜、魚類などの食物に少量含まれる。人体にあっては、細胞膜を形成するリン脂質として存在するが、とりわけ脳の神経細胞膜は10%ほど占める。

ミズーリー州カンザス・シティのキャロル・アン・ライザー医学博士が3-19歳のADHDの子供たち27人に1日100〜300mg与え、4カ月間観察したところ、破壊的な行動は沈静化し、注意力、集中力、記憶の維持の改善が見られたという報告もある。

子供たちの脳や精神機能の発達障害の原因としてはさまざまなファクターが挙がっており、環境ホルモンや合成化学物質の影響もその一つともみられている。
米国の汚染の進む五大湖のPCBの人間に与える影響を初めて調べた研究では、五大湖でとれた魚を食べていた母親が生んだ子供たちの知能を15年間調査したところ、子供の知能テストの結果が、臍の緒にPCBが多く含まれていた子供ほど知能が低くなっていたことがわかったという。臍の緒を通じて化学物質が胎児に入り込み、脳に影響を与えている可能性が示唆されている。

高齢者から子供たちまで脳機能の低下が懸念され、危険信号が点滅しているが、とりわけ脳内に発生するフリーラジカル(活性酸素)による損傷で中枢神経組織の衰退や認識行動障害が起きやすいとされるため、日頃からの予防としては、前述の青みの魚に含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)の他にも、EやCなど抗酸化物質を多く含む素材の摂取が望ましいとされる。また、米国ではギンコ(イチョウ葉)が強い抗酸化作用を持ち、痴呆症の改善効果に優れているとの評価が高い。


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