【 2012/9 】

魚油、高齢者の筋力低下予防に役立つ

9月17日、有楽町朝日ホールで、市民講座「じょうずに食べて元気に長生き〜低栄養・口腔ケアの視点から」が開催された。 超高齢化時代の到来を迎え、認知症などの疾患対策が急がれている。2015年には団塊の世代が65歳以上になる。厚生労働省の統計では、2025年には高齢者人口が3500万人に、つまり3人に1人が65歳以上になるといわれている。

日々の栄養摂取による健康管理は、「食の摂り方」という口腔ケアについても留意が必要となる。
当日は、『がんばらない!』の著者として知られる、諏訪中央病院名誉院長の鎌田實氏が「元気に長生きするためにできること」と題して特別講演を行った。 この中で、鎌田氏は、日本人の死因順位で肺炎はガン、心疾患、脳血管障害に継いで第4位。肺炎は誤嚥が直接の原因となる。また、低栄養で体力がないことでも起こりやすいと述べた。また、「食べる」ことがうまくいかない原因の一つに「亜鉛不足」があるとし、亜鉛不足で味覚障害が起き、食欲不振になると指摘した。

また、おいしいものを味わい、感動した時にセロトニンが分泌されるため、黙って食べないで、「うまいな」と声に出すことも大切であると述べた。

高齢者の疾患対策では、「食の摂り方」が重要だが、食材そのものの見直しも大切である。例えば、日本人が伝統的に摂ってきた魚。この魚に多く含まれるオメガ3脂肪酸がアルツハイマー病予防に有望であるとNeurology誌12.5月号で報じている。

アルツハイマー発症の一因として、アミロイドベータタンパクの沈着が挙げられているが、Columbia University研究者グループが、65歳以上の被験者1,219例の栄養分摂取と血漿アミロイドベータタンパク値の関連性を調べた。研究期間は、平均1.2年。その結果、オメガ3脂肪酸の平均摂取量より1g/日以上多く摂取した群では、アミロイドベータタンパク値が20%から30%の範囲で減少したことが分かったという。

最近の研究では、魚油が高齢者の筋力低下予防に役立つと、British Science Festivalで報告されている。 University of Aberdeen研究者グループが、65歳以上の男女を抵抗運動12週間プログラムに参加させ、被験者の半数に魚油サプリメント、残り半数にプラセボを与えた。その結果、魚油投与群では筋力が20%増加したが、プラセボ群は11%の増加だったという。


この他、ビタミンEが認知機能の維持に有用であると、Neurobiology of Aging誌12.9月号が報じている。Karolinska Institutet研究者グループが、ビタミンE(トコフェロール4種(アルファ、ベータ、ガンマ、デルタ)、トリエノール4種(アルファ、ベータ、ガンマ、デルタ))の認知機能の有効性を調べた。

AddNeuroMed-Projectに参加したアルツハイマー病患者168例、軽度認知障害患者166例、正常認知機能被験者187例(最低65歳)のデータを分析したところ、正常認知機能群と比べ、アルツハイマー病、軽度認知障害患者はトコフェロール値、トコトリエノール値、総ビタミンE値が低いことが分かったという。

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