食品の機能性成分や安全性など
最新研究を報告


2005年5月13日(金)〜15日(日)、東京農業大学世田谷キャンパス百周年記念講堂で「第59回日本栄養・食糧学会大会」が開催された。 総会後に、特別講演「機能性食品研究の未来を見つめて」など3講演や、ランチョンセミナー、シンポジウム、ポスターセッションなどが行われた。 大会前日には市民公開講演会が開催され、「お年寄りの骨を守る」などの講演が行われた。
老化による脳の認識機能の低下に、抗酸化物質が
果たす役割

今大会で行われた食品の栄養成分や機能性に関する講演は、「大豆イソフラボンの閉経後骨粗鬆症予防効果〜動物からヒトまで〜」、「食品に含まれる抗酸化成分の功罪〜分子機構研究の視点から〜」、「食事性フラボノイドの消化管における吸収代謝と機能性」、「活性酸素、酸化ストレスとビタミンE」、「老化、記憶障害そしてビタミンE」、「持久力を増進する食品のスクリーニング:脂肪酸化を促進する食品を中心に」など。

「持久力を増進する食品のスクリーニング:脂肪酸化を促進する食品を中心に」では、林 基元氏(建国大学体育教育科)が、「運動は脂肪酸化能力を増進する効果が強い」とし、運動時に脂肪酸化を高める食品をスクリーニングした研究結果を発表。「コーヒーの主成分であるカフェインは、運動1時間前に5mg/kg飲用すると、著しく運動中の脂肪酸化が増加することを確認した」ことなど報告した。

「大豆イソフラボンの閉経後骨粗鬆症予防効果」では、石見 佳子氏(独立行政法人国立健康・栄養研究所 食品表示分析・規格研究部)が、閉経後女性を対象とする大豆イソフラボンの無作為割付比較試験の研究成果を発表。大豆の摂取で、「閉経後女性の骨量減少の予防が有効である可能性が示唆される」ことなど報告した。

また、浦野 四郎氏(芝浦工業大学・生物化学)は、「老化、記憶障害そしてビタミンE」と題した講演で、老化は活性酸素(フリーラジカル)が原因として注目されているとし、抗酸化物質を摂ることの必要性を報告。
加齢と関連するアルツハイマー病については、脳にアミロイドβ色素が蓄積することが原因であるという説が有力視されている。浦野氏らは動物実験で、「酸化的ストレスを与えた場合、脳の海馬にアミロイドβが蓄積し、それと平行して記憶能が著しく低下する」ことが明らかになっているという。しかしながら、事前にビタミンEを投与した場合はこうした現象を防ぐことができたことを報告。

ゲノム(遺伝子情報)解析利用した機能性食品の開発、今後の主要テーマに

食品の安全性に関するものでは、「食品の安全とリスク」、「食品のリスク・コミュニケーション BSEを例にして」、「食肉・食肉製品の色をめぐる問題と対策」、「動物および動物由来加工食品の安全性」などの講演が行われた。

現在、多くの食品に添加されている化学物質や微量の食品構成成分の安全については十分把握されているわけではないが、「食品の安全とリスク」と題した講演で、熊谷 進氏(東京大学大学院農学生命科学研究科)は、「ヒトにおいて有害な健康影響が起こらないと考えられる摂取許容量あるいは摂取耐用量を科学的データを用いて求め、それに基づいて食品中の許容量を設定する方法が採用されている」ことなど現況を報告した。

また、機能性食品の展望として、「機能性食品研究の未来を見つめて」と題して、荒井 綜一氏(東京農業大学応用生物科学部)が講演。今後、食品のゲノム(遺伝子情報)解析によるゲノム科学が食品分野で重要な役割を果たし、「近い将来、個人個人を対象にした栄養の解析と目的に合わせて仕立てた食品の開発が主要なテーマとなるであろう」と述べた。


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