平成17年7月21日、紀尾井町ザ・フォーラムで、健康フォーラム座談会「健康長寿の秘訣〜腸内細菌と機能性食品」(主催:日本食品機能研究会(JAFRA))が開催された。当日、浜松医科大学客員教授の遠藤雄三氏の進行により光岡知足氏(東京大学名誉教授)、池田義雄氏(生活習慣病予防協会会長)、Dr.Mamdooh Ghoneum(UCLA/Drew University)が、腸内細菌の役割や疾患予防のための「食」管理について見解を述べた。
加齢やストレスで腸内に悪玉菌が増え、免疫力が低下
近年、免疫機能の強化やがんをはじめとする各種疾患予防に腸内細菌の果たす役割が大きいことがいわれている。光岡氏は腸内細菌を悪玉と善玉に大別し、それらのバランスが健康に影響をおよぼすことを日本で最初に提唱したことでも知られる。
光岡氏は、腸内細菌について、「今では500種類もいるといわれる。菌数は100兆個。善玉と悪玉あって、ストレスや老化、また肉食に偏ると善玉のビフィズス菌が減り、悪玉が増える。悪玉菌の中には有害な物質を作るものもあり、老化や病気を促進する」と解説。
生まれたての赤ちゃんの場合、ミルクの乳糖でビフィズス菌が増え、それらが腸内の95%を占める。これにより、「腸内のpHは4.5から5.5と低くなり、悪玉菌のウエルッシュ菌や大腸菌はほとんど腸内にいられない」(同)。その後、加齢やストレスで悪玉菌が増え、免疫低下、各種疾患罹患へとつながる。そのため、腸内のビフィズス菌を増やし、免疫力を高める必要があるという。
プロバイオティクス、プレバイオティクス、バイオジェニックスの腸内での役割
また、さまざまな疾患と腸内細菌との関連について、「アトピー性皮膚炎の子供は腸内にビフィズス菌や乳酸菌が少ないことが報告されている」と光岡氏。ヨーロッパのリストニアとスウェーデンの子供との比較調査では、リストニアの子供のほうがアトピーになりにくく、スウェーデンのアトピーになった子供には乳酸菌が少ないことが判った、という。この他、花粉症などにも腸内細菌が関与することを指摘した。
さらに、「生きた乳酸菌(プロバイオティクス)を摂ることが良いといわれているが、死んだ乳酸菌を摂っても免疫機能を高めるということがわかっている」と述べ、オリゴ糖や食物繊維などのプレバイオティクス、免疫調整物質の米糠アラビノキシランなどのバイオジェニックスの有効性について見解を示した。
疾病予防のための栄養学や「医薬品とサプリメントとの相加作用」など公的機関での教育が不十分
池田氏は、増加するメタボリックシンドローム(代謝症候群)にふれ、「肥満が深く関与している。メタボリックシンドロームとがんの予防には共通項が非常に多い」とし、腸内の善玉菌を優位に保つ食生活やストレスケアの重要性を述べた。
日頃の食生活については、三大栄養素以外に、腸内の善玉菌を増やす食物繊維を十分摂る必要性を指摘。また、
食事やサプリメントによる疾病予防に関して、医療現場において栄養学や「医薬品とサプリメントとの相加作用」の知識が不十分なことなど指摘した。
ストレス、NK細胞の活性にも影響
ゴーナム氏は、がん細胞をアポトーシス(自壊)へと導くNK細胞に関して、これまでに数多くの実験を行っているが、「ラットにストレスをかけると明らかにNK細胞の活性が下がる」と報告。また、「ストレスで善玉菌が減り、悪玉菌が増える」と述べ、NK細胞活性と腸内細菌との相関を指摘した。