医療応用への可能性、
米国で健康食品の機能性徹底検証


7月8日、東京電機大学 神田校舎(東京都千代田区)で、第1回「JACT代替医療の理論と実際の研究会」(主催:日本代替・相補・伝統医療連合会議)が開催された。この中で、各種代替医療の医療応用のために必要なエビデンス(医学的根拠)についての討論が行われた。

イチョウ葉やガーリック、米国で薬剤との併用の際の問題点など検証

当日は、医療従事者、マスコミ関係者らおよそ100名が参加。JACTで設立した代替医療理論研究会の第一回目の会合ではあったが、代替医療のみならず西洋医療におけるエビデンスに対しても議論がおよび、参加者の関心が集まった。当日の、主な講演内容は、「エビデンスとは何か」(JACT渥美理事長)、「EBM(Evidence-Based-Medicine)は医療の進歩を妨げる」(阿岸鉄三:東京女子医科大学名誉教授)、「代替医療の理論は科学で語れるか」(佐古曜一郎:ソニー梶jなど。

講演の中で、JACT渥美理事長は、昨年後半から今年4月末にかけて、韓国(ソウル)、米国(アリゾナ、ハワイ)、ドイツ(ミュンヘン)で開催された相補・代替医療(CAM:Complymentary and Medicine)の国際会議に参加した際の世界の代替医療への取り組みを報告。「この1年の間に、世界のCAMを取り巻く状況は急激に変化している」とし、CAMに対する研究や臨床応用の急速な普及・発展状況について述べた。 また、西洋医療とCAMとの統合が世界的な潮流になりつつあることを強調した。 この他、米国ではハーブ(薬草)による代替医療が盛んだが、人気素材のガーリックやイチョウ葉、抗鬱ハーブとして話題のセント・ジョンズ・ワートなど、薬剤との併用の際の問題点についてNIH(米国立衛生研究所)をはじめとする政府機関の徹底検証が行われていることを報告した。

米国では1994年に施行された栄養補助食品教育法案(DSHEA)により、サプリメントの販売の際の規制緩和が行われたこともあり、国民の間で代替医療としてハーブを利用する傾向が高まっているが、薬剤と併用するケースが多く、医療関係者の間で阻害作用などを懸念する声が挙がっていた。 先頃、米国ではセント・ジョンズ・ワートを経口避妊薬、抗HIV剤などと併用した際、薬剤の有効性が阻害されることが指摘された。

規格基準のあいまいさ目立つ米国ハーブ

また6月2〜4日に開催された「第4回JACT大会2000」でも、丁宗鉄氏(東京大学医学部生体防御機能学)が昨年8月20日にNIHのシンポジウム「慢性肝疾患と相補代替医療」に参加した際の報告を行い、その中で米国ハーブサプリメントの規格基準の甘さ、治験不足などを指摘した。

丁氏によると、米国の代表的な患者グループ団体が主催したミニシンポジウムが開かれ、そこで専門家が質問を浴びせられるという一幕があったが、米国では健康食品が倍々ゲームで売られているにもかかわらず、メーカーによる十分な治験がなされず、それを見過ごしている行政に対しても手厳しいクレームが突きつけられた、という。

米国では肝臓病の代替薬ではハーブが人気があり、漢方薬はそれに次ぐといわれるが、そうしたハーブについても「規格基準がなく、根を使おうが、葉を使おうが、実を使おうが、生だろうが、乾燥していようが、何でもいい。それを使っていればいいというのが現状」と規格策定のあいまいさを指摘した。

また、米国における漢方ハーブの扱いについても次のように語った。「米国では1820年に米国薬局方が編纂された。これは民間委託で、最初は生薬が600種類以上記載されていた。それが改訂のたびに減り、化学薬品に置き換えられ、現在では生薬そのものはゼロになった。それでFDAとNIHのNCCAM(代替医療調査センター)が共同して生薬の規格基準を作ろうという動きになった。日本と比べるとずいぶん遅れている。日本薬局方は、内容、規格について厳密に規定されている。世界で一番厳格な薬局方が日本にはある」。

ここ数年、代替医療としての健康食品の役割が注目されており、今後一層エビデンスの検証が厳しさを増すことが予測されるが、その機能性が期待されているだけに、徹底検証は避けて通れそうにない。


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