各種疾患を予防し、”未病”保つ食品の機能性成分に注視

2005年1月8日、9日の両日、大宮ソニックシティで第11回日本未病システム学会が開催された。8日は会長講演、シンポジウム「癌と未病」、ポスター発表などが、また9日には市民公開講座「家庭の食から健康を考える」が行われた。医療費高騰の抑止が叫ばれ、予防医学が重要視される中、セルフメディケーションに有用な食品の機能性成分の最新報告が行われた。

発酵食品の味噌、制がんや放射線防御作用などの有用性

「体質と未病」と題した丁 宗鐵会長の講演では、「漢方では病気の準備状態すなわち『未病』とみなす」とし、虚証・実証タイプを例に、虚証は体の異常を感じるセンサー感度が高いが、実証タイプは感度が鈍く、重篤に至ることがあるため、実証に焦点をあてた医療の展開が必要であることを指摘した。

シンポジウム「癌と未病」では、「フードフイトケミカルとがん予防」(名古屋大学大学院生命農学研究科 大澤 俊彦)、「食品による制癌効果並びに放射線防御作用」(広島大学 渡辺敦光)、「食品成分によるがん予防」(京都府立医科大学 西野輔翼)、「肝癌の二次予防におけるビタミンK2の効果と臨床応用」(佐賀大学医学部肝臓・糖尿病・内分泌内科 山本 匡介)の4演題が行われた。

この中で大澤氏は、「ビタミン、ミネラルなどの微量栄養素のほかに、非栄養素であるフードフイトケミカルの機能性に大きな関心が集まっている」とし、野菜や果物などに含まれる「抗酸化食品因子」の機能性を紹介。また、「がんや生活習慣病など各種疾患の主因は酸化ストレス」とし、「抗酸化制御機能」を持つ代表的な機能性成分として、有色の米種子や野生種子に含まれるポリフェノール色素、アブラナ科野菜のイソチオシアナート、ターメリックの黄色色素のクルクミンなどを挙げた。

また、渡辺氏は、大豆の機能性が世界的に注目されているが、特に発酵食品である味噌の有用性に着目、「味噌が放射線防御作用並びに大腸癌の前がん病変(ACF)並びに胃腫瘍を抑制するが、その効果が大豆によるのか発酵によるのか不明である」とし、味噌の熟成度の差による制がん効果、放射線防御作用についてラット実験の結果を報告。胃がん、大腸前がん病変、大腸がん、肺がん、放射線防御作用について、熟成味噌を投与したところ、特に180日熟成味噌が最も有効性を発揮することが判明、「発酵により抗腫瘍効果や放射線防御作用を起こす物質が産生されることが示唆された」と報告した。

カロテノイド、複数成分で補完・相乗効果

西野氏は、野菜や果物に多く含まれるカロテノイドの機能性について解説。リコペン、β-カロテン、α-カロテン、α-トコフェロールの複合カロテノイドサンプルの経口投与において、4年目における肝がん累積発生率が投与群は有意に低く、複合カロテノイドは肝細胞がんの発生予防に有効で、臨床応用が可能であることが示唆されたことを報告した。また、食品は複数の成分の混在により効果を高め、欠点を補完し、優れた効果を示すことを指摘した。

山本氏は、日本における肝細胞がんによる死亡者は年間約4万人で、今後も増加が予測される状況に対し、「肝がんは初発がんの治療後も、年率20−25%の確率で他部位に再発することが知られている」とし、再発予防(二次予防)としてのビタミンK2の有効性について臨床研究の結果を紹介。61人の肝がん患者を対象に、ビタミンK2を投与したところ、1年12.5%、2年39.1%、3年65.5%と明らかにビタミンK2投与群において再発率の有意な抑制がみられたことを報告した。


Copyright(C)2005 JAFRA. All rights reserved.