2月11日(水)、科学技術館サイエンスホール(東京都千代田区)でシンポジウム「自然治癒力の時代へ」が開催された。この中で、世界的な免疫学者として知られる新潟大学大学院(医歯学総合研究科)の安保徹教授が講演し、がん発症のメカニズムを明らかにした。
無理な適応を超えた生き方、がんや各種疾病の発症原因に
講演で安保教授は、がんをはじめとするさまざまな疾病について、「何か遺伝子に異常があってということではなく、あまりに無理な適応を超えた生き方をしたため、破綻をきたし、病気になったのではないか」と指摘。そのため、免疫学的な観点から、まず「生き方を見直すべき」と述べた。
私達の身体のさまざまな臓器や器官は自律神経で調節されており、交感神経と副交感神経でさまざまな調整が行われている。活発に活動する昼間は交感神経が優位に働き、緊張を解く夕方から夜にかけては副交感神経が優位に働く。
こうした自律神経の身体調節機能において、安保教授らは8年ほど前に、白血球が自律神経の支配下にあることを発見した。
ウイルスや細菌といった異物が体内に侵入した際に取り込んで処理をする白血球は、基本細胞であるマクロファージ、貪食能の強い顆粒球、免疫を高めるリンパ球の3種類がある。
顆粒球は大量の活性酸素で体内に侵入した異物を処理する。しかし、顆粒球は増え過ぎると、常在菌をどんどん攻撃し、化膿性の炎症を発現させるようになる。顆粒球は短期間で死滅するが、その際に活性酸素を放出し、周囲の組織を酸化・破壊させる。
リンパ球は、ふだんは休んでいて、細菌が浸入した際に、マクロファージからのサイトカインという物質の情報により、抗原の侵入に気づきはじめて活発な分裂を繰り返し準備態勢を整える。
こうした白血球は自律神経の支配下にあり、交感神経神経が優位になると顆粒球が増え、副交感神経が優位になるとリンパ球が増えるというメカニズムで我々の身体は守られていると安保教授はいう。そしてそのバランスが崩れることでさまざまな疾病が発症するという。大半は、交感神経神経優位の顆粒球が増えておこる疾病で、歯槽膿漏や痔、胃潰瘍や潰瘍性大腸炎といった粘膜が破壊される炎症系の疾病が発症する。また、リンパ球が過剰になると、抗原に過敏に反応するようになり、アレルギー疾患を起こしやすくなるという。
「健康な人は顆粒球とリンパ球が6:4くらいの比率です。もっと正確にいうと私達のリンパ球の正常値は35〜41%です。この範囲に入っていると健康で、免疫力十分な世界です。ですが、リンパ球が35%を割ると顔色がすぐれない、30%を割ると早期のがんとか組織障害の病気に入ります。20%近くになると進行がんの世界に入ります。逆にリンパ球が45%を超えるとじんましんが出るとか、身体がかゆいとか過敏反応が出てきます。40%を超えると確実にアレルギーの世界に入ります」と安保教授はいう。
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