21世紀は肥満との戦い、アジアで増加する
メタボリックシンドローム


平成18年7月4日、日本記者クラブ(東京都内幸町)で「メタボリックシンドローム〜食育の必要性と治療指針」(主催:東洋医学フォーラム)が開催された。当日、寺本民夫教授(帝京大学医学部内科)が日本のメタボリックシンドロームの現況について講演した。

高脂血症や高血圧、糖尿病、肥満など重複すると、
心筋梗塞の発症リスクが10倍以上に

高齢者人口の増加により、アルツハイマー症や骨粗しょう症などの罹患増が懸念されているが、ここにきて急浮上しているのが、中高年層の肥満に起因するメタボリックシンドローム(metabolicsyndrome:Met.S)。
昨年4月、8つの医療関連学会(内科学会、循環器学会、高血圧学会、糖尿病学会、肥満学会、腎臓学会、動脈硬化学会、血栓止血学会)で構成された合同委員会が、「メタポリックシンドロームの定義と診断基準」を発表、マスメディアでもこれを取り上げ、メタボリックシンドローム(以下略、Met.S)は、日本でもよく知られるようになった。

Met.Sとは、高脂血症や高血圧、糖尿病、肥満などのリスクファクター(危険因子)の重複により、動脈硬化が高頻度で生じる病態をいう。動脈硬化が進めば、心筋梗塞や脳梗塞の発症へと繋がる危険性も高まる。リスクファクターが比較的軽症でも3、4つ重なると、心筋梗塞の発症リスクが10倍以上になるといわれている。

近年、Met.Sは世界的な広がりをみせており、WHO(世界保健機構)では、これまで低栄養や感染症からくる短命化防止策をとってきたが、疫学的変遷から方針転換を迫られているという。「健康寿命を伸ばす阻害因子である高脂血症がアジア諸国で進んでいる。肥満による問題が出てきた。21世紀は肥満との戦いともいわれている。心血管病の発症状況をみるとアジア、とくに中国とインドで非常に増えている」と寺本氏は指摘する。

一方、日本でも、「1980年から90年にかけて日本人のコレステロールレベルが急激に上がっている」状況で、肥満が深刻化しているという。とくに、「30代、40代でメタボリックシンドロームが非常に増えている。相当注意しなければいけない。肥満と血圧とは非常に関係している」と寺本氏。肥満で中性脂肪が多いと炎症が起こりやすく、動脈硬化を招きやすいという。
日本人8,000人を対象にした食事療法による調査では、コレステロールを下げた食事のグループのほうが心血管病の抑制に有意な効果が見られたという。

Met.Sを改善する方法としては、まず体重を減少させること。現在、一つの指標として提案されているのが7%の体重減少。「体重を5%下げると、糖尿病の指標は下がる。7%の体重減少で心血管病を予防できないか検討されている」という。


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