「健康食品の存在意義〜代替医療の進展する中で」〜第15回健康食品フォーラム開催

2008年10月2日(木)、東京・虎ノ門パストラルで「第15回健康食品フォーラム」(主催:財団法人医療経済研究・社会保険福祉協会、後援:厚生労働省、農林水産省、文部科学省)が開催された。フォーラムは、「健康食品の存在意義」〜代替医療の進展する中で〜のサブタイトルのもと、矢澤一良氏(東京海洋大学大学院海洋科学技術研究科教授)の司会で、4人の講師による講演やパネルディスカッションが行われた。


健康食品の安全性確保や正しい知識の消費者への普及啓蒙が重要

玉川淳氏(厚生労働省 医薬食品局 食品安全部 基準審査課 新開発食品保健対策室長)は、「健康食品の安全性の確保 〜存在の前提条件〜」と題して講演。行政の立場から、健康食品について、安全性の確保が利用の大前提であると強調した。

玉川氏は、国民の健康に対する関心の高まりや健康食品の消費の増加の中で、国民が適切な選択ができるように、行政は規格基準や表示基準等を定めるなどの取り組みを行ってきたが、従来、一般に飲食に供されないものを原材料にするものや、錠剤、カプセルなど特殊な形態のものを含む食品が、健康食品として広く流通している現状を危惧。

安全性確保については、食品衛生法や食品安全基本法を参照して、まず製造までの段階においては、食経験のない食材など原材料の安全性の確保が改めて問題になるとし、製造される製品の品質の確保を図るため、製造工程の適切な管理がより一層求められるとした。

また、販売される段階においては、消費者が個別の製品を選択する際に、製造者の安全性に関する取り組みについて目安となる表示がないことに加え、消費者が健康食品に関する適切な情報提供・相談支援を受けられる体制も不十分であるとした。

さらに、健康食品に起因すると疑われる健康被害が発生した場合、その被害が当該製品によるものか否かの因果関係の把握が容易でないことなどから、全体として健康被害情報の収集や分析が進まず、類似する事案の再発防止に十分活用されていない、と分析した。

健康食品による健康被害情報について、情報の収集と処理体制の強化が急がれるとし、さらに安全性確保に関しては、認証協議会など第三者による客観的な立場からの確認・認証の仕組みが望ましいとした。

安全性確保・健康被害・販売後調査・医薬品との併用・食経験などの情報公開が不可欠

信川益明氏(慶應義塾大学医学部教授・日本健康科学学会会長)は、「医師の立場からみた健康食品の可能性と問題点 〜医療科学と健康科学を踏まえて〜」と題して講演。

日本健康科学学会が、過去数年にわたってシンポジウムなどを通して健康食品に関する情報提供や、考察、提言などを行ってきた活動実績を披露。健康食品の安全性と有用性に関しては、それぞれの立場における問題点や義務について触れた。

まず、行政については、消費者などが健康食品に関する情報提供を行政に求めても、行政が新たなリスクを予測することは困難であり、企業側に医薬品と特定保健用食品の併用に関する安全性を実証する責任と、その情報提供を担っていく責任が求められるとした。

食品の分野は、行政がガイドラインをつくって確認するのではなく、各製品については提供者や食品業界団体の責任で基準を作成し、実際にガイドラインをどのように活用するかが重要であるとの考察も示した。

企業については、製品の安全性は企業が担保することが必要であり、企業と健康食品業界団体が中心となって安全性を確保するデータベース体制を構築することが必要であると強調した。

健康食品業界団体については、特定保健用食品以外のいわゆる健康食品も含めて、安全性基準の作成が不可欠であり、業界の自主基準について検討し、早急に制度化することが求められるとし、消費者の視点から有用性に基づく「健康食品の表示」に関する健康食品業界団体による自主基準の作成が必要であるとした。

消費者については、安全性に関してすでに何件かの問題が発生しているが、食品がゼロリスクでないことが消費者に伝わっていないとした上で、何か問題が発生したら、行政の責任ではなく、科学的な限界を理解し、自己責任の重要性を理解することが大切であり、100%安全な食品はないことを理解し、安全な食品の見分け方を知り、リスクを回避して安全な食品を使用することが望まれると訴えた。

医師、薬剤師、栄養士、アドバイザリースタッフについては、混合診療を踏まえた医療機関での特定保健用食品の使用は増えるだろうと予測しつつも、医師が医療現場において医薬品服用患者に特定保健用食品の使用を躊躇する理由として安全性の実証データがないことを挙げ、健康食品と薬物との相互作用の問題は、医師、薬剤師、栄養士、食品保健指導士の協力がないと解決できないと、 協働の必要性を強調した。

自社の商品を自分の家族が毎日摂取して心配のない自信があるものでなければならない

太田明一氏(キリンホールディングス株式会社技術戦略部アドバイザー、健康と食品懇話会相談役)は、「企業の立場から見た健康食品の存在意義 〜健康志向の高まりの中で〜」と題して講演。

食品にも、人の健康・心身に影響を与える機能があること。その機能について、科学的エビデンスがある範囲で表示・表現してよいということだけで、国民のQOLの向上に役立ち、その結果医療費の削減が期待できるとし、さらにその上、世界をリードする健康産業という知的集約・情報集約産業が育成されると考えられると述べた。

健康食品業界については、まさに玉石混交の状態であり、玉と石を区別し、玉になる努力をしない石は排除しなくてはならないと、現状を分析。各企業が消費者から理解していただける努力をし、業界に石が混じらない作業をし、国や公共団体がサポートすることができなければテークオフはできないと訴えた。

また、消費者が数多くある商品の中から自分にとってどれが一番良いか、価格も含めて判断できるだけの情報提供と、その情報が活用できるシステムの構築がとくに必要であると強調した。

このほか、津谷喜一郎氏(東京大学大学院 薬学系研究科医療政策学特任教授)は、「お金と効き目と好みからみた健康食品の位置づけ」と題して講演。いくつかの特定疾病とそれにかかる医療費の推移をとりあげ、健康食品がうまく機能すれば、疾病予防から医療費の低減にもつながることを示唆した。


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