栄養摂取、数値より個人差で正しく活用
〜日本人の食事摂取基準(2010年版)

10月14日(水)、 食品開発展2009セミナー(東京・有明)で、佐々木 敏教授(東大大学院医学系研究科公共健康医学専攻社会予防疫学)が、「日本人の食事摂取基準(2010年版)の理論と活用」をテーマに講演した。数値ではなく、個々人が自身に適した量を摂ることの必要性など説いた。


栄養素、多く摂れば摂るほど良いというわけではない

平成21年5月末、日本人の食事摂取基準(2010年版)が厚労省より発表された。同基準は、国民の健康の維持・増進、生活習慣病予防のためにエネルギーや栄養素の摂取基準を示したもの。前回の2005年版から5年ぶりの改定となる。

今回は34種類の栄養素を策定。対象となったのは、1)人の生存、健康の維持・増進に不可欠かつ摂取量が定量的に明らかで、科学的に十分に信頼できる栄養素、2)日本人の生活習慣病予防に深く関わっていることが科学的にも明らかな栄養素。

佐々木教授は、「2005年版と比べ、概念は変わってないが、中身は大きく変わった」と述べ、一例として、上限量が耐容上限量という表現に変わったことを指摘。「上限量は、ここまで食べると健康になれるという量でなく、ここを超えると不健康になるという量」。ミスリードしないよう、耐容という言葉が付けられたという。

耐容上限量で問題になりがちなのが、サプリメントのような栄養強化食品の摂取。「通常の食品を摂っている限り、耐容上限量は考えなくていいが、強化食品を摂ると超える可能性が否定できない」と佐々木氏。通常以外の食品を摂る場合、過剰摂取による健康障害が懸念されるため注意が必要という。

栄養素の過剰摂取ではとかくビタミンAが挙げられる。過剰に摂ると頭痛、慢性毒性で、皮膚の落屑、脱毛、筋肉痛などが報告されている。さらに妊婦の場合、Aの過剰摂取で胎児の催奇性が懸念されている。

大切なのは栄養素を過不足なく摂ること。例えば、カルシウムは推奨量650mg/日だが、97.5%の女性に摂取不足はなく、これを850mg/日にすると不足のリスクは低下するものの、その恩恵にあずかれるのは2%ほどで、残りの人に新たなメリットはないという。

「みんなにたっぷりの時代は終わった。あなたにこれという時代。たくさん食べれば食べるほうが良いというのは事実ではない」と佐々木氏はいう。

「食事摂取基準は、数値の時代から理論・理屈の時代。活用は、数値をあてはめる時代から、考える時代に入った。正しく理解し、正しく活用することが大切」という。


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