アルカリ性の砂である黄砂が雨や水蒸気などの水分を含み、非常に粘度の高い状態で日本まで到達した時、そしてこのなかにウィルスが入っていた場合、それは十分に生命力を維持したまま病原菌が輸送さる可能性は高いと真木氏は指摘する。
90年代になってから、口蹄疫は世界中で報告されており、特に東アジアで蔓延状況にあるといえる。モンゴル、ロシア、韓国では2000年に発症しているがこれは黄砂由来であることがすでに指摘されている。マスコミでは風の影響と鳥の影響をあまり取り上げていないが、それらの影響はかなり高いのではないかと真木氏はいう。
3月26日の水牛の口蹄疫発生について、九州全域及び宮崎で観測された3月16日の黄砂、そして3月21日の黄砂が原因ではなかったかと推測されるという。
特に3月21日に観測された黄砂は全国67カ所で観測されており、非常に強いものであったことがわかっている。宮崎では今回で2回目の口蹄疫発生となるが、宮崎に発生しやすい理由としてその地形と気象状況から、黄砂が舞い降りる傾向が強くあることが挙げられると真木氏は解説する。
九州7県でも宮崎は黄砂の発生日数が多い県だが、宮崎県が九州山地の風化側に位置し、冬春季の晴天日には北西風が多いという気象特性に由来しているからではないかと分析。また宮崎県内での春季・夏季の時期による口蹄疫伝搬の状況について考察すると、季節風による移動方向が関係していることも考えられる。
これらの状況からさらに推測をすると、まず3月の段階で黄砂による長距離輸送によるウィルスが原因となり口蹄疫が水牛に発症、4月以降の発生・蔓延原因は3月の原因と異なり、土、砂埃や微小物質等に付着したウィルスの風による拡散、伝搬ではないかと真木氏。というのも、都農町、川南町、高鍋町と南方へ伝染していった経路を分析するとそれは春季の北西風による伝染が考えられるからという。
いずれにせよ口蹄疫発生の際、予防・防除指導を畜産農家に事前に行なっていなかったことは被害拡大を助長した。防風林の有効利用や石灰散布、発生後もヘリコプターや飛行機を使って薬剤を散布すれば、比較的少ない殺処分になったのではないかという。実際、韓国では大型薬剤散布機での対応で少ない殺処分で済んでいるという。
会場からは、口蹄疫はそもそもそ病気が発症している動物によって確認をすることができるが、タクラマカン砂漠やゴビ砂漠にはそのような発症中の家畜がたくさんいるのか、それが日本まで飛び火しているのか、という疑問の声もあがった。
真木氏によると、黄砂とはタクラマカン砂漠やゴビ砂漠からくるダストだけではなく、モンゴルや韓国などいろいろなエリアのダストを巻き上げながら日本に広がり通過しているため、どこかで発症していればそれが世界中に広がりかねない循環システムがあるという。
大気中で構成成分や物質を複雑化しながら広がる黄砂の分析は、現状難しく、黄砂が今回の口蹄疫の直接的原因だとはもちろん断言することはできないが、かといって、その可能性がゼロであると断言することもできないと真木氏はまとめた。