EUの効果的な食品安全システムがようやく整う
オランダのリスク評価機関である食品・消費者製品安全機関、リスク管理機関の保健福祉運動省、またEFSA(欧州食品安全機関)で食品の安全問題に尽力しているイレーネ氏。現在、トゥエンテ大学で食の安全やリスクコミュニケーションに関する研究を行なっている。
ヨーロッパのリスクコミュニケーションで最も重要なことは、市民からの信頼、ヨーロッパだけでなく世界の人々に信頼される、EUの効果的な食品安全システムがようやく整ってきたとイレーネ氏。
EUがスタートした頃は混沌としており、食の安全についての概念や基準は各国バラバラ、それぞれの政府は「経済重視」「業界保護」で、EU内で食の安全に関して協調を図ることは極めて難しかったという。
1990年代、多くの食の安全問題が噴出
しかし、1990年代に入り、BSE(狂牛病問題)とヤコブ病のつながりやクローン羊ドリー、フランケンシュタイン食品と呼ばれる遺伝子組み換え作物、鳥や鶏肉のダイオキシン汚染の問題など、食への不安・不信が噴出し、消費者も情報開示を求めるようになった。
だが、食のリスク評価をめぐっては、EU内で対立しており、各国政府がトラブルに誠意のある対応をしなかったため、消費者の公的機関への信頼は失墜し、メディアも市民の不満や怒りを多く報道した。
消費者は、遺伝子組み換え作物の普及による食物連鎖にも不信感を抱くようになるが、消費者の公的機関や食品への信頼失墜の最大の要因は、なによりも「真実の隠蔽」にあったとイレーネ氏は述べる。
人々の懸念に真剣に対応せず、各国政府は真実を報道することもなく、だんまりを通した。真実の隠蔽ばかりか、食品安全について矛盾したアドバイスまで行なって逃れようとしたという。
2002年、EUの食品安全掲げ、欧州食品安全機関(EFSA)設立
その結果、最終的にEU経済も大打撃を受け、世界からも信頼を失いかねないような状況となった。そのため、2002年にEUの新しい食品安全政策がようやく検討される運びとなり、「農場から食卓まで」のアプローチ(食物連鎖全体について安全性を担保しようという考え)や、消費者の健康保護という観点からEU食品法の改善が行なわれるようになった。
EU食品法では消費者の利益が保護され、消費者が十分な情報とともに選択できる基盤が整備。食品関連法の立案、評価、改善に関してオープンで透明な協議が進められるようになった。
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