薬や食品との安全な付き合い方、
ライフサイエンスと人類の健康
〜昭和大学 学術シンポジウム 記念講演会


2010年9月23日(木)、昭和大学旗の台キャンパスで、学術シンポジウム記念講演会「ライフサイエンスと人類の健康」が開催された。当日、「食と健康」をテーマに同大学の教授陣が講演。「薬と毒」(薬学部毒物学 教授 吉田武美)、「生活習慣病の危険因子と食酢」(保健医療学部作業療法学科 中山貞男)の二つを紹介する。

薬と毒 昭和大学薬学部毒物学 教授 吉田武美

薬と毒は両刃の剣、100%の安全は保障できない

クスリはリスク、薬と毒は両刃の剣ともいわれ、薬が毒になるか、毒が薬になるかはその量で決まると吉田氏。薬はどのような摂取方法であっても全身に分布することから、100%の安全を保障できないことが最大の問題点と指摘する。

薬も毒も、人体にとっては明らかに異物である。私たちは病気を治すために薬を摂取するが、どんなに微量でも、体はそれを異物と認識し排出しようとする。

製薬会社は排出されないような薬の開発を続けているが、薬物代謝に重要な役割を果たす体内の代謝酵素は遺伝とも関係しており、個体差がかなりあることも判明している。

異物排泄の代謝で毒物へと変わる場合も

西洋人と東洋人でも代謝酵素は大きく異なる。例えば、ケシに含まれるコデインという成分は体内でモルヒネ化し、鎮痛効果を発揮するが、欧米人の場合、鎮静効果を発揮せずに、毒物に変わるため使用できない。このように、侵入した異物を排泄させるために行った代謝により、その成分が毒物に変わる場合が多々あるという。

コデイン(モルヒネ)については、東洋人であっても副作用として身体的、精神的依存性に陥ることが否めない。従ってアメリカでは遺伝子診断を行ってから薬を処方するという方法が近年用いられるようになっているという。

どのような薬も適量を守らなければ毒になる

私たちがふだん何気なく摂っている物にも発ガン物質を含むものは多くある。例えば、ワラビのプタキロシド、コンフリーのピロリジン系アルカロイドなど。 毒も改良し、正しい使い方をすれば薬になる可能性もあるが、人体の遺伝子レベルでの個体差とも関係するため、十分な注意が必要である。

どのような薬も、適量摂取を守らなければ毒になることは明確で、健康食品においても同様のことがいえるという。

生活習慣病の危険因子と食酢
昭和大学保健医療学部作業療法学科 中山貞男

米酢、陰陽五行では温性で肝・胆の働を助ける

米酢は中国から韓国を経て日本へ伝えられた。中国の陰陽五行説による食物の五味五性では、米酢は酸味・温性で、肝・胆の働きを助け、筋肉や眼の疲労を癒し、血液の酸化を防ぐものとして重宝されてきた。食品においては腐敗を防ぎ、しめさばやすし飯が生まれた。

しかし現在市販されている一般的な米酢は即席で十分に熟成されず、アミノ酸が酢に浸透する時間が不十分、かつ原料として使用する米の量も圧倒的に少ないこともあり、栄養価はさほど高いとはいえないと中山氏。

アミノ酸が豊富な黒酢

健康には、昔からの食酢により近い黒酢を選んで欲しいと中山氏はいう。黒酢は一般的な食酢と比べてアミノ酸が25倍近く豊富で、生活習慣病予防にも期待できるという。

黒酢はラット実験で、高血圧、高血糖、高コレステロール、肥満などの生活習慣病の危険因子のリスク低下が認められている。45歳以上の健康な成人に対しても善玉コレステロールが増加、悪玉コレステロールが減少することなどが分かっている。

また、黒酢は食物の消化・栄養成分の吸収を助ける。海藻、緑黄色野菜、根菜類、ニンニク、ニラ、らっきょうなどの五葷、小魚、大豆などそのままでは消化が悪く、調理すると成分が失われるような食物も黒酢と合わせて摂れば消化・吸収も良くなるという。

健康維持が期待できる黒酢の1日の摂取量は体重50キロの人で大さじ三杯程度、1日に1〜3回に分けて料理や飲用すれば無理なく毎日続けられると述べた。



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