生産段階から、危険要因がない方式で行う
もう一つの政策は、そもそも生産段階から、できるだけ危険要因が出ないような生産方法をとっていくものであり、例えば、BSE問題では肉骨粉などを食べさせず、放牧など自然の摂理に沿った牛の飼育をする、農作物であれば合成農薬や化学肥料を使う必要のない有機農業で栽培する、そのような生産方法が可能になるような条件整備をするための政策であるという。
2006年には「有機農業の推進に関する法律」が施行されており、この法律では「有機農業の推進」を国家及び地方公共団体の責務としている。同法の「基本理念」では、有機農業は「農業の自然循環機能を大きく増進し、農業生産に由来する環境への負荷を低減するもの」であり、生物多様性の保全に資するものであること、また「安全かつ良質な農産物に対する消費者の需要に対応した農作物の供給に資するもの」であると記されている。
2007年、「有機農業推進基本方針」制定
これまで民間で地道に進めてきた有機農業がようやく公認されたといえる、と久保田氏。そして、この法律ではこのような有機農業に農業者が容易に取り組め、また、消費者が有機農業により生産される農産物が容易に入手できるよう、生産・流通・消費それぞれの側面において、有機農業推進のための総合的な施作を講じるとしている。
2007年に、国は「有機農業推進基本方針」を定め、それに基づき現在は都道府県、市町村の段階で「推進計画」の策定やその実施が進められている。
推進すべき有機農業とはどのようなものか。有機農業について表現の仕方はさまざまだが、共通することは「生きた土」であるかどうかだと久保田氏。良質で完熟した堆肥を入れることでできる微生物・土中小動物(ミミズなど)が豊かに生息している健康な土であることが、健康な植物を育て健康な家畜を育てる。
有機農業は健康な生命が循環する農業
このような土から育まれた健康な農産物や畜産物を食べることによって、人々ははじめて健康ないのちを獲得できる。有機農業は健康の輪が幾重にも描かれるような生命の循環する農業であり、それは地域の自然に根ざし、生きとし生けるすべてのものと共存する農業だと久保田氏。
日本では有機農業という言葉を用いて取り組みが始まったのは1971年であり、すでに30年以上経過した現在、多くの実績や成果もあがっているという。この30年の歴史を辿ると、日本の有機農業は生産者と消費者が相互に協力し、共に有機農業の発展をめざしている、という特徴があると指摘する。
自然の循環に沿い、環境汚染を引き起こさない
具体的には産直や共同購入方式のことであるが、消費者が積極的に有機農業運動に加わり有機農業の発展を担ってきている。海外から安価な農産物が大量に輸入されているなかで、生産者に「適正な価格」を払い続けるためにも、消費者側にはさらなる農業と食への知識が必要になってくるという。
有機農業は食の安全の問題だけでなく、身近に食べ物を育む農業があることの安心感、その農業が地域の自然循環に沿ったもので環境汚染を引き起こさないことへ貢献していること、さらには生産者と消費者のつながりをつくりだす暮らしにつながることにまで、我々は考えを拡大するべきであり、毎日の食事、身近な食卓から農業や地域を見渡す視線が我々消費者にはよりいっそう求められている、と久保田氏はまとめた。