アレルギー反応による重篤な児童、およそ2万人
近年、食物アレルギーに罹患した子供が急激に増加傾向にあることは周知のとおり。食品メーカーや企業にとって食物アレルギーに関わる事故を起こさないための企業努力は極めて重要な課題となっている。
日本で食物アレルギーによる死亡事故はこれまでに一例のみ報告されており、その内容は1988年に札幌市内で喘息持ちの小学校6年生が給食の蕎麦で具合が悪くなり早退させたところ、帰宅途中にアレルギー反応でも重篤な症状であるアナフィラキシーの症状が発症し、呼吸困難に陥り死亡したというものであった。裁判では担任の教諭と札幌市教育委員会の安全配慮義務違反、過失とされた。
この事故報告以降、文部省が全公立小中高3万6830校(約1277万人)を調査しているが、平成16年度には食物アレルギーの児童や生徒がおよそ33万人(全体の2,6%)を超え、また命に関わるアナフィラキシーショックを起こしたことのある子供は1万8323人(0,14%)もいることがわかった。
食物アレルギーに有効な医薬品はない
食物アレルギーとは本来栄養となる食物(たんぱく質)が、ある人にとっては免疫の異常反応を誘発する物質となり引き起こされる症状で、微量の摂取でもじんま疹、湿疹、下痢、嘔吐などアレルギー症状を呈し、アナフィラキシーショックを引き起こすと生命の危険があることからも大変危険な症状である。
しかしながら現在のところ食物アレルギーに有効な医薬品は開発されておらず、食物アレルギーを誘発しないためには、アレルギー症状を誘発する食品を摂取しない、ということ以外方法がない。アレルギー症状を誘発する食品を摂取しないためにはアレルギー食品を正しく表示する制度が必要であることから、食品衛生法により取り扱いがされるようになったという経緯がある。
原材料の表記など正確な情報提供が求められる
食品衛生法では保健所等による監視を行っており、企業が原材料や特定原材料の有無について情報提供をきちんと行っているかを確認する業務、そして収去検査(いわゆる抜き打ち検査)を行うことで違反がないように取り締まりを強化している。違反が発見された場合は、販売停止措置や営業停止措置、2年以下の懲役または200万円以下の罰金、法人では1億円以下の罰金が科せられる。
企業自らが表記漏れや誤表記などに気付いた場合には速やかに自主回収をすることになるが、自主回収はその旨の謝罪広告を含む広告費用、回収費用等が大幅にかかるだけでなく企業の信用も大きく失墜し、企業にとっては何のメリットもないということになる。そこで、企業のリスク低減のためには正しい表示に注意を払うだけでなく、一歩進んだ自主検査を導入することが求められているという。
アレルギーの特定原材料7品目、準ずるもの18品目
例えば「卵を原料としていないはずの○○を使用して料理をしたら子供がアレルギー反応を起こした。本当に卵を使っていないのですか?」という問い合わせがあったとき「工場では卵を使った製品を作っているが、○○を製造する前にライン清掃をおこなっているため可能性は少ないと思います」と、回答するのでは不十分であり、卵が混入していないということを証明しきれない。
自主検査を行っていれば「工場では卵を使った製品を作っていますが、清掃後、法規の基準をクリアした検査をして、卵が混入されていないことを確認・記録しています」と返答できれば、卵が入っていないことを証明するのに役立つだけでなく、他の食品でのアレルギーをすみやかに見つけることへ貢献することにもなる。
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