健康食品の安全性や表示のあり方、認証
制度で整備 〜第1回「機能性食品勉強会」

2010年10月21日(木)、持田製薬本社で薬業健康食品研究会が主催する第1回「機能性食品勉強会」が開催された。第1部では「健康食品の品質、安全性について」(財)日本健康・栄養食品協会事務局長の加藤博氏が、第2部では「健康食品の品質・有効性表示の可能性について」同文書院 代表取締役の宇野文博氏が講演を行ない、参加者とも活発な議論が交わされた。

健康食品の品質・安全性について
(財)日本健康・栄養食品協会事務局長 加藤博

事業者以外からもわかる認証制度の仕組みを構築

(財)日本健康・栄養食品協会(以下、日健栄協)は、公益財団法人への移行を目指す取り組みとして改革の基本方針に乗っとって現在活動を行なっている。

主な活動項目としては「協会の事業を推進するために、会員数の増大と財源確保を図ること」「国際動向に配慮して健康食品の機能性表示制度の確立に向けた活動を推進すること」「ニューJHFAマークの付与・更新制度を創設し、JHFAマークからニューJHFAマークへの移行を推進すること」「健康食品GMP及び“安全性・第三者認証制度”を推進し、健康食品の活用に関する消費者理解の向上をはかること」などであるが、いずれも協会の公益性の向上を狙いとしている。

「いわゆる健康食品」について日健栄協が果たすべき役割とは、健康食品業者が安全で品質のよい製品を製造・輸入し、消費者へ適正な情報を提供し適正に販売するために仕組みをつくり推進・支援すること、そしてこれらの取り組みが事業者以外からもわかる認証制度といった仕組みを構築することである。

新規のガイドラインを追加、「ニューJHFA」

現在協会が運用している「いわゆる健康食品」の安全性や品質を確保するための制度やガイドラインにはJHFA、GMP、安全性第三者認証の3つがあるが、これらを整理・統合し必要があれば新規のガイドラインを追加したものを「ニューJHFA」と称して推進することが必要だと検討されているという。

また、先に挙げた3つのガイドラインでは「いわゆる健康食品」の安全性や品質を確保することは不十分であるという現状があり、今後必要と思われるガイドラインには、販売倫理に関するガイドライン、表示・広告に関するガイドライン、原材料の規格基準設定のためのガイドライン、有効性の評価方法と一定の表示方法などがあると考えられている。

そこで「ニューJHFA」では安全性、GMP、有効性の評価と表示、表示方法、販売の方法のすべてを統括し、消費者の高い信頼を獲得できるものを目指したいと、その構想内容を加藤氏は説明した。

健康食品の安全性自主点検認証制度(第三者認証)の申請受付を開始

また、健康食品の安全性自主点検認証制度(第三者認証)についても説明。今年の4月に協会が「健康食品認証制度協会」より健康食品の安全性確保に関する第三者認証制度の「認証機関」の指定を取得したことで、協会が事業者の実施した原材料や製品の安全性自主点検を審査し、適切に実施されていると評価できる場合に認証登録を行ない、その商品に対して付けることができるマークである。7月21日から申請受付を開始したばかりであるというが、すでに60件以上の申請があったという。

しかしながら審査は極めて難航しており、現在のところ認証マークが取得できたものは1アイテムのみで、他の多くはペンディングであるという。
というのも、審査書類は協会内に設置された安全性自主点検認証登録事務局での入念な確認作業が行なわれた後、書類漏れなどのチェックも行なわれ、さらには医学、獣医学、薬学、食品化学、栄養学等の有識者およびGPM経験者により構成された審査委員会によっての確認作業が入るためであり、審査そのものにもかなりの時間がかかるからであると説明。
提出書類において曖昧な表現や曖昧な自主点検では審査を通ることが極めて難しく、審査を厳格にしているため事業者との提出書類の出し戻しを含めたやりとりも多いのが現状だという。

認証登録の有効期間は3年間、求められる厳格な
製品管理

年内にはもう一度審査委員会が開催されるため、「認証登録」となったものについては今年中に一斉公表をする予定だと木村氏は説明。この認証登録を受けるだけでも事業者にとっては大変な努力が求められるが、認証登録後の管理についても留意しなければならないという。

認証登録の有効期間は3年間で、その期間も製品の安全性に関する情報収集と適正な製造工程管理(自主点検の記録など)を行なわなければならず、3年間情報がアップデートされなかったものについては、更新ができないような内容となっていると説明した。

いずれにせよこの制度を活用することよって、事業者が自ら積極的に健康食品の安全性の向上を図り、消費者の商品選択に資し、広く消費者の健康増進に寄与できればと木村氏はまとめた。

健康食品の品質・有効性表示の可能性について〜ナチュラルメディシン・データベースを用いたハイクオリティ認証
同文書院 代表取締役 一般社団法人 日本健康食品・サプリメント情報センター理事 宇野文博氏

医薬品や健康食品の相互作用、1600通りがすでに判明

近年、欧米では健康食品のニーズと需要・供給が高まるなかで、健康食品の科学的根拠を見極めるために少なくとも2200億円もの補助金が投下されているという。その研究の集大成がナチュラルメディシン・データベースであるが、これを管理する同文書院の代表である宇野氏は、このデータベースの日本語版こそ今後国内の健康食品マーケットを拡大させ、さらに海外へのマーケットも拡大することに貢献できると述べる。

宇野氏の実父は薬の相互作用で命を落としたという。また宇野氏の義母もプロポリスとある漢方の併用で肝炎になったが一命を取り留めたという。 そこから、薬の相互作用について関心を強めた宇野氏は、医薬品と医薬品、医薬品と健康食品、医薬品と売薬、売薬と健康食品、米薬同士、あるいは健康食品同士といったさまざまな相互作用が存在し、そのデータベースが日本には存在しないだけで、世界各国では当たり前のこととして存在していることを知るようになったという。世界のスタンダードでは1600通りの相互作用がすでに判明、公表されており、そのうちの25%が死亡事故の可能性を持つ重篤なものであるという。

ヒト試験による膨大な学術論文や研究資料を日々収集精査

健康食品の世界基準のオンラインデータベースであるナチュラルメディシン・データベース(以下NMDB)は、本部をアメリカのストックトンに置き、100名を越えるリサーチャーと専門研究委員会から構成される民間組織によって構築されており、世界中で健康食品の科学的根拠を得るために繰り返されているヒト試験による膨大な学術論文や研究資料を日々収集精査し、その結果をもとに医薬品との相互作用などの情報も加えて毎日更新している。

アメリカをはじめ、イギリス、カナダ、オーストラリアほか数十カ国の国家行政機関が、英語、スペイン語のNMDBを公式採用し、英語圏の各国では350万人が使用しているという。

日本語版NMDB、日本国内の健康食品3万点を
掲載

日本語版NMDBの特徴は、日本医師会、薬剤師会、生活習慣病関連学会が推奨しているということ、そして日本医師会が公式採用していることや、独立行政法人国立健康・栄養研究所がホームページで提供する「健康食品の有効性・安全性情報データベース」の原本となっていることなどであろう。収載項目は1200種類以上あり、日本国内で入手できる健康食品、サプリメント、ハーブなどはおよそ5万点と見込まれているが、そのうちの3万点については掲載されているという。

また日本特有成分でも動物実験の結果はスクリーニングだけに使用され、基本ヒト試験エビデンスに基づく厳格なデータを精査、編纂しているという。有効性はエビデンスにより6段階で表示され、安全性、副作用、摂取禁忌も解説、摂取量や摂取時間、相互作用についてはそのメカニズムも記載しているという充実の内容だ。先日話題となったホメオパシーの問題でも、その有効性について科学的根拠がほとんどないということを、日本学術協会はじめ多くの関連団体はこのデータベースを根拠に発表したという。

全国医師会会員17万人がデータベースを閲覧

日本語版NMDBは現在のところ一般書籍、また医師や薬剤師などの関係者がID取得で閲覧することのできる無料DB、医師会専用DBなどがあり、iphoneやipad用のデータベースや業務用アプリケーションの開発も現在進行中であるという。医療従事者の間では正式採用されているため、全国医師会会員17万人がこのデータベースを閲覧することができるようになっており、薬剤師会でも公式採用される見込みがあるという。

一般消費者に対しては2冊の一般書を限定出版しているが、病院で取扱われているにも関わらず現時点で2万部を売上げているという。

NMDBを基盤にしたハイクオリティ認証制度

NMDBは総合認証のベースとしてハイクオリティ認証を提唱している。これは、健康食品の安全性や有効性を、NMDBを基盤にして認証する制度であり、第三者の試験機関による安全性、成分含有、品質保証などの試験を受けた製品がその裏付け資料を宇野氏が理事を務める一般社団法人日本健康食品・サプリメント情報センターの定める書式とともに提出することで、ハイクオリティ認証の審査を受けることができるというものである。

認証、情報精査の作業はトクホ認定メンバーで構成されているが、NMDB特有の安全性確認チェックを受けた後、一般的な安全確認を行ない、総合認証システムであるハイクオリティ認証を取得することができるようになっている。

健康食品だけでなく、医薬品の危険性も同じレベルで情報開示しなければフェアでない

ナチュラルメディシン・ハイクオリティ認証システムのなかでハイクオリティ認証は一番最初の段階であり、このあとには有効性ハイクオリティ認証、特定有効性ハイクオリティ認証、医用ハイクオリティ認証とレベルアップしていくことが可能であるという。

この認証マークはQRコードと一体型であり、顧客サービスとして安全性ばかりでなく相互作用などの注意事項にリンクすることができるシステムになっている。

このマークを採用した商品を大手ドラックストアであるマツモトキヨシが8品目に導入したところ、それらの商品の売上げが25%程度アップしたという結果が報告され、消費者の健康食品情報ニーズの高まりを示していると宇野氏は分析する。

NMDBを使用して認証を取得することで、トクホに続く安心・安全の証明ができると宇野氏は述べる一方で、参加者からはマークが増えることやその手続きの煩雑さなどに疑問の声もあがった。健康食品の安全性を保障すること、あるいは危険性があるのであればその情報を開示することは重要ではあるが、健康食品だけでなく、医薬品の危険性も同じレベルで情報を開示しなければフェアではないという声もあがった。  


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