その証拠に人工乳で成長する人工栄養児は、母乳栄養児よりも感染や牛乳アレルギーなどを高頻度に起こしやすいことがすでに報告されている。
人工栄養児における出生後一年間の医療費も母乳時に比べて著しく高額であり、見過ごせない問題であるとイヴァン氏は指摘。
母乳と人工乳における成分の差は特にオリゴ糖にあり、これは母乳において3番目に重要な成分であるそうだが、人工乳にも牛乳にも豆乳にも存在しないものであることがわかっている。
オリゴ糖、善玉菌の餌になる
オリゴ糖はプレバイオティクスであり、プレバイオティクスとは、大腸に共生する細菌の増殖や活性を通じて、肉体の健康を向上させる難消化性の食品のこと、善玉菌の餌にもなっている。
母乳にはプロバイオティクスも含まれているが、プロバイオティクスとは、行きた状態で腸に到達する微生物で、これも肉体の健康増進に不可欠であることがわかっている。
子供は、まだ未熟だというだけでその免疫系はわずか一年で10億を越える病原菌に絶えず曝露されているという。特に免疫系の弱い子供(未熟児なども含む)は、気道感染、中耳炎、胃腸炎など感染に対してさまざまな症状を引き起こすことになる。
腸管も非常に重要な免疫器官であるが、この免疫器官の力を高めるためにも、赤ちゃんを母乳で育て生後直後から腸内環境を整えることが非常に重要だとイヴァン氏はいう。
プロバイオティクス添付の人工乳、複数研究で
健康増進効果が報告
母乳に含まれるプレバイオティクスには、オリゴ糖の他にビフィズス菌も多く含まれる。これらのプレバイオティクスを混合したものを添加した人工乳を乳児に与えたところ、母乳と同等までのレベルではないが良好な結果が報告。
またアトピー性疾患のリスクを持つ乳児にプレバイオティクスを投与したところ、皮膚炎の発症頻度が減少することも報告もされている。
特に生後6ヶ月までに行なわれたこれらの介入が、2歳の時点での健康状態に対し有益的に作用することが示されている。
プロバイオティクスが添付された人工乳においても、複数の研究により健康増進効果が報告されていて、プレバイオティクスとプロバイオティクスの併用による乳児の健康増進効果もいくつか報告されている。
しかしこれらの実験件数や報告データがまだまだ少ないため、今後データの蓄積を行なうことが重要であるとイヴァン氏。
母乳、赤ちゃんや乳児のゴールデンスタンダード
いずれにせよ、母乳には完璧な状態とバランスのプレバイオティクス、プロバイオティクスが含まれており、この母乳の栄養が赤ちゃんや乳児にとってのゴールデンスタンダードと位置づけられる。
人工乳をゴールデンスタンダードに近づけることはもちろん可能であろうが、日常的に多様な食事を摂取した母親から与えられる母乳を上回る完全栄養はなさそうであるとまとめた。