飲み過ぎなければ酒は百薬の長
酒は百薬の長であるが、過ぎては害であるということは1980年代から科学的に証明されている。過度な飲酒が原因と考えられる病はたくさんあり、飲み過ぎて食事をあまりとらないと寿命は短くなることは既に明らかとなっている。
しかし適量、つまり一日一合程度であれば、死亡率は飲酒をしない人よりも低いというデータもあり、やはり飲み過ぎなければ酒は百薬の長になるのだと、加藤氏は解説する。適量とは人により異なるが、おおよそビールで1、2杯、日本酒で1、2合、ウイスキーでシングル3杯程度という。
アルコールの問題点は特にビールなどが高カロリーであるにもかかわらず、ビタミンやミネラルなどがほとんど含まれず、いわゆるエンプティカロリーである点と加藤氏は指摘する。
肝脂肪、2000年には25%を越える
メタボリックシンドロームとアルコールの関係は、近年の研究課題だが、適度な飲酒は2型の糖尿病の発症リスクを低下させる、メタボリックシンドロームそのもののリスクを低下させる、といったデータも出てきている。しかし一方で、逆の報告もあり、まだはっきりしとした関連は判っていないという。
かつては、調査対象が入院患者や浮浪者に及んだ事から、アルコール依存症の患者は低栄養の傾向が強いと考えられていたが、近年はアルコール依存症患者でも収入が十分ある場合は、一日の摂取カロリーを十分に満たしている傾向が強いというデータを併せて発表した。
特に日本国内では肝脂肪と判断される人が増加傾向にあり、全国の人間ドックでも肝機能障害は異常頻度の第一位で、1984年にはドックを受ける全体の10%以下だった肝脂肪が、2000年には25%を越えたという。
適度な飲酒は心血管系疾患による死亡を減少
また、心血管系疾患とアルコールの関係で、適度な飲酒は心血管系疾患による死亡を減少させ、冠動脈疾患の患者も減少させることが判っている。これはアルコールによる血管拡張作用やリラックス作用との関連と考えられているという。
しかし無茶飲みをした場合は、高血圧がもたらされ、動脈疾患の患者の死亡を増加させることが判っている。適度な飲酒であれば、脳卒中の死亡リスクも低減させるが、大量飲酒(エタノール60g/一日)では、脳卒中の死亡リスクは増大することもわかっている。つまり、飲む量によって健康への影響が左右されることを今一度肝に銘じなければならないと加藤氏。
増える女性若年層の飲酒量
近年の日本の飲酒状況としては、フランスやアメリカが89年頃から国民一人当たりの平均飲酒量が減少傾向にあるのに対し、日本では70年代から上昇し続け、89年頃から今日まではだいたい横這い傾向である。しかしながら若年層の女性の飲酒量は増えており、これは同年大の男性をしのぐ勢いであることも発表した。
世界がん研究基金では「がんを予防するための提言」を2007年に発表しているが、ここでも飲酒するとしても男性はエタノールとして一日平均20〜30g(やはり日本酒一合相当)、女性では10〜15g以内に留めることを推奨している。
また、アルコールを摂取する際には低栄養になったり、逆に栄養過多になりすぎたりしないよう十分配慮しながら、それでも食事と共に楽しむほうがよいと加藤氏。アルコールも食事も、多くの人が自分の好きなものを好きな量を自由に摂れるようになったのは、人類にとってごく短い歴史であり、自分自身でコントロールすることを学べば、アルコール依存症やアルコールが引き起こす病、そしてメタボリックシンドロームとも無縁で、百薬の長として楽しむことができるとまとめた。
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