ビタミンを正しく摂って いきいき健康ライフ 〜ビタミン発見100周年記念フォーラム
2010年11月30日(火)、大手町サンケイプラザで、「ビタミン発見100周年記念フォーラム ビタミンを正しく摂って いきいき健康ライフ」が開催された。今年はビタミン発見から100年目にあたる。明治時代に発見され、現代まで私たちの健康維持に寄与するビタミン。その歴史と現状について講演が行われた。

ビタミンの特徴と働き-明日の健康長寿のために
ビタミン・バイオファクター協会会長 
京都大学名誉教授 岩井 和夫

ビタミン発見の歴史、ビタミンBから

ビタミンは私たちの健康を支える上で必要不可欠な栄養素で、微量でも毎日すべての種類を一定量摂取しなければならない栄養素である。

ビタミン不足の心配から、特定のビタミンだけをサプリメントなどで摂取する人も増えているが、やはり基本は食事からの無理のない摂取が望ましい。

ビタミン発見の歴史を振り返ると、明治43年(1910年)東京帝国大学農科大学教授の鈴木梅太郎氏がビタミンBを発見したことからスタートする。きっかけは米の研究と当時原因不明の病気として恐れられていた脚気の研究にあった。

白米食で江戸わずらい(=脚気)に

元禄時代、脚気は「江戸わずらい」と呼ばれ、結核同様国民病として恐れられていた。明治時代も100万人以上が脚気にかかり、うち1/30くらいの人々が命を落とすほどの重症に陥ったといわれる。

元禄時代あたりから生活水準が徐々に向上し、特に武士たちが江戸勤務になるとそれまで口にしたことのない白米を食べるようになり、知らず知らずのうちに脚気を患うことになるが、故郷に戻りしばらくすると病状が治まったことから「江戸わずらい」という風土病とみられていたようである。

当時、貧しい農民たちは雑穀を主食としたが、江戸では白米を食べており、玄米であれば自然に摂れていたビタミンBも、糠をそぎ落とされ十分に摂れなかったためと今では考えられている。

白米を麦飯に、脚気が激減

脚気は西洋にはない病気であったため、鈴木氏は自らの留学経験から「米」と「脚気」を研究対象とした。

脚気にかかったハトに米ぬかを与えると病状が改善されることに気づき、1910年、米ぬかから脚気を治す成分を抽出。当初「アベリ酸」と名付けられた。この成分こそが現在のビタミンBであった。

当時の日本の軍隊でも脚気は相変わらず猛威を振るい、軍の存亡にも関わる危機であった。白米ではなくパン(後に麦飯)を中心とした食事を摂らせたところ脚気患者が激減したことが報告されていたことから、西欧と日本の軍隊の違いは食事にあるのではないかと考えられていた。

しかし、食事の改善で病気が治るはずがないと軍の上層部は納得せず、鈴木氏の発見や米ぬかによる食事療法も日本では無視されてしまったという。

その後、ビタミンの研究は米国や英国が中心となり、1911年にポーランドのカシミール・フランクが同様に抽出した成分を「ビタミン」と命名するが、現在では鈴木氏が事実上のビタミン発見者であることが世界的に知られ、高く評価されている。

1911年以降は、ビタミン発見のラッシュで、1948年のビタミンB2発見を最後に、現在までに13種類のビタミンが正式に認められている。

近年、一人暮らしの高齢者の脚気が増加傾向に

脚気は、手足のしびれや全身の倦怠感、つま先があがらない、つまずきやすくなるといった運動麻痺、動悸、息切れ、低血圧、むくみ、食欲不振、などの症状が現われ、進行すると歩行困難、最終的には心不全で死に至ることもある恐ろしい病気である。

徳川13代、14代将軍も脚気で命を落としている。しかし、このように猛威を振るった脚気も、現在は知らない人もいるくらい、栄養状態が改善されている。

にもかかわらず近年また、高齢者の一人暮らしなどの世帯で脚気が秘かに増加傾向にあり、年間を通して死亡する人も数名いる。

特にビタミンB1はインスタント食品にはほとんど含まれず、日常生活や運動などでも消費され、最も不足しやすいビタミンの1つ。年齢に関係なくビタミンB1不足が食欲不振、いらいら、倦怠感を招いている可能性は高い。

ビタミン不足は老化を早める

よく知られているビタミン欠乏症は以下である。まずはビタミンAが欠乏することによって起こる目のトラブル(夜盲症、核膜軟化症など)。ビタミンBが欠乏することによって起こる骨の異常(くる病など)。

ビタミンKが欠乏することによって起こる骨、歯のトラブルや血液異常(血が凝固しなくなる)。ビタミンB2,B16欠乏による粘膜のトラブル(口唇炎、口角炎、舌炎等)。ビタミンB12,葉酸欠乏による血球肥大、貧血などの血液のトラブル。ビタミンC欠乏による壊血病など。こうした症状で、病気に至らないまでもビタミン不足は老化を早める。

ビタミンを上手に摂るためには、それぞれのビタミンの一日の必要摂取量をまず理解すること、そして自分自身の摂取量をおおまかに把握すること(食事日記などを活用)、そこから不足しやすいビタミンを分析し、意識的に食事から補うことである。

例えば、コンビニの食事にはビタミンA,K,Eが圧倒的に不足している。また忙しく働いている時間帯にはエネルギー生産に関わるビタミンB1,B2,ナイアシン,パントテン酸が多く必要とされる。

ストレス対策に、ビタミンC,Eなど抗酸化ビタミン

また、ストレスを受けている場合は抗酸化に関わるビタミンC,Eの必要量が高まる。働き世代は厚生労働省が作成した「日本人の食事摂取基準」に示された「推奨量あるいは目安量」より若干多め、あるいは積極的にビタミンを摂っても過剰になることはないと考えられている。

また、高齢者は肉食を控える傾向があることから、ビタミンB群の不足に陥りやすい。高齢者は骨の病気予防としてビタミンD,Kも積極的に摂取したい。食用油を機能性で選び活用することも重要で、サプリメントを賢く利用する方法もある。

いずれにせよビタミンを意識しすぎると食事がカロリーオーバーになりがち。自分に不足しがちなビタミンを知り、積極的に補い健康を維持したい。


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