がん患者のサプリメントとの上手な付き合い方、正しい情報を得て使い分ける
〜第13回「日本補完代替医療学会学術集会」

2010年12月11日(土)、帝京平成大学で、第13回日本補完代替医療学会学術集会 公開セミナー「がん患者さんのサプリメントとの上手な付き合い方」が開催された。講師に金沢大学大学院医学系研究科 臨床研究開発補完代替医療学講座 特任教授の鈴木信孝氏が招かれ、がん患者の多くが摂取しているサプリメントについて、最新の臨床経験に基づいた報告が行われた。


尖形コンジローマ、食品で完治に衝撃

鈴木氏がサプリメントに興味を持ったのには大きなきっかけがあったという。それは、医師を辞めようと思うほどの衝撃な出来事であった。

13年程前、鈴木氏が婦人科医として尖形コンジローマを患った患者さんを担当した時のことだ。尖形コンジローマは、冷凍療法や抗がん剤で治療することが主流で、鈴木氏もそうした療法を患者さんにすすめた。しかし、患者さんの祖母がそれに反対し、自家製の醗酵ハトムギを患者さんに3週間毎日飲用させたところ、症状が完治した。

当時、鈴木氏はベテランの婦人科医であったが、これまでの医学の常識が音を立てて崩れるようであった。と同時に、食品は病気を治す、という確信を持つようになったという。醗酵ハトムギは、その優れた食品機能が今では世界的にも注目されている。

日本の医学部、栄養学を学ぶことがほとんどない

中国医学では、病気を薬で治す医師よりも、食で治す医師(食医)のほうが一番位が高く、尊敬されている。しかし日本の医学部では食品の機能や栄養学についても学ぶことがほとんどない。また、農学部や薬学部でも食品機能の臨床研究が行なわれることはめったにないというのが現状である。

薬は少なからず副作用があり、換言すれば毒でもある。病気の場合、摂取はやむを得ないが、未病の状態ではやはり薬ではなく食による対応ではないか。そうしたことから鈴木氏は、農学部や薬学部とも協力し、食品や濃縮形態のサプリメントを臨床で研究するようになる。

サプリメントの人気上位20種類程度でも、医師は勉強すべき

2005年の厚生労働省調査によると、がん患者のうち43%、つまり二人に一人はサプリメントを摂取しているという報告がある。うち三人に一人はアガリクスを利用しているということが分かっている。こうした状況にもかかわらず、医師の70%はサプリメントや食品機能についての知識が全くないといっていい、と鈴木氏。

アガリクス以外にも、ビタミン類、プロポリス、霊芝、ローヤルゼリー、フコイダンなど、患者に人気があることがわかっている。少なくとも人気の上位20種類程度でも、サプリメントの勉強を医師はすべきではないかと鈴木氏は指摘する。

サプリメントに懐疑的な意見を持つ医師も少なくないが、補完代替医療はもともと伝統医学として西洋医学が普及する以前から経験的に利用されてきた。

西洋医学に比べると科学的な検証が十分とはいえないが、食経験が長い物は信用できると鈴木氏はいう。

サプリメントの正しい情報を得て、付き合い方を考える必要

現状では医師がサプリメントについて十分な知識を有しているとはいえない。患者はサプリメントの正しい情報を得て、付き合い方を考える必要がある。そこでポイントになるのが、未病期、治療期、手術前、手術後、とステージによってサプリメントを使い分けたり選んだりすることである。

特に、がん患者にとって最も大切なことは、がん治療と並行して、体調をなるべく良い状態で保ちQOLの質を高めること。医療現場においては、患者の体調や気持ち、副作用などにも気を配ることが、より治療効果を高めることにつながるという。

相互作用、医薬品とサプリメントだけでなく医薬品間でも問題

医薬品との相互作用では、グレープフルーツジュースとの併用がよく知られるが、医薬品とサプリメントだけでなく、医薬品間でも考えられる問題であり、特にがん患者の場合は複数の薬を摂取しているため、薬同士のほうにも気を配る必要がある。食べ物で病気は治せない、と言い張る医師もいるが、薬は食べ物や植物からできている物が多く、そう断言することはできないと鈴木氏。

例えばシイタケやその元になるシイタケ菌糸体エキスは、レンチンとして胃がんに効果のある薬品として用いられている。シイタケ菌糸体エキスは、抗がん剤との併用でNK細胞活性の低下抑制や、免疫抑制細胞の数を減らすことがわかっている。がん細胞を直接アタックすることはないが、免疫回復と体調改善の効果は十分期待できるという。

薬とサプリメントを併用した治療を行なう病院や外来が増えている

近年、補完代替医療を専門に研究する研究室が、金沢大学や大阪大学などの国立大学にも設置され、さらなる科学的な検証が進んでいる。

実際に患者と相談しながら、薬とサプリメントを併用した治療を行なう病院や外来が、金沢大学、大阪大学のほか、徳島大学、東京女子医大附属青山自然医療研究クリニックなど少しずつ増えているという。

医師や医療従事者への教育も少しずつ始まり、将来的には患者と医師とのサプリメントのコミュニケーションが進むことが期待されるとまとめた。


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