フラボノイドの消化管吸収のしくみを解析
近年、食の機能性研究が進み、機能性成分を強化した食品や栄養補助食品が数多く開発され販売、消費されている。しかしこれらの主成分の消化・吸収・体内への分布・代謝・排泄機構についてはまだほとんど解明されておらず、効果と安全性については不明な点が多々あるのではないかと小林氏は指摘する。
食品中の機能性成分は、経口摂取された後、消化管から吸収され、体内循環系に入り、さまざまな組織へ輸送され、機能を果たし、代謝変換された後、最終的には体外へ排出される。特に消化管吸収は摂取成分が体内へ入る第一のステップであり、機能性成分の効果・安全性に関わる最も重要な要素である。
小林氏を含む研究チームは、肥満細胞を抑制することで抗アレルギー作用を発揮することが期待されるフラボノイドの一種であるヘスペレチンに注目し、ヒトの結腸がん由来の細胞と人工脂質膜を用いたフラボノイドの消化管吸収のしくみを解析したと報告した。
食品と医薬品の相互作用、複雑で不明なものが多い
消化管の粘膜層は経口摂取成分が高濃度で到達するため、食品成分間の相互作用や食品と医薬品間の相互作用が最も起こりやすい所であると考えられている。また消化管は、多くの取り込み型、排出型のトランスポーター(400種類もあるといわれる)を発現し、これらが栄養・食品成分だけでなく医薬品をも基質とするという。
これまで消化管でのトランスポーターを介した食品と医薬品間の相互作用については解明が複雑で明らかなものが少なかったが、研究チームは、ラットを用いた抗インフルエンザ薬の毒性試験から、抗インフルエンザ薬とミルクとの同時摂取では消化管吸収が抑制される可能性を見い出したという。
さらに抗インフルエンザ剤が消化管に発現するオリゴペプチドトランスポーターの基質であることも分かり、抗インフルエンザ剤の消化管吸収において、ミルクのようなタンパク質を多く含む食品を同時摂取すると、消化管内で生じたペプチドにより吸収が抑制され、薬効が激弱する可能性が示唆されたと小林氏は発表した。
高齢者、医薬品の併用が多いため相互作用のリスク検証が必要
これは臨床においても同様ではないかと小林氏は予測する。特に2〜3時間おきに哺乳し、常に消化管内にペプチドが高濃度で存在する乳幼児においては注意が必要ではないか、と指摘。実際に絶食したラットと非絶食時のラットでは抗インフルエンザ剤を投与して比較したところ、絶食時のラットのほうが抗インフルエンザ剤の脳内濃度が十倍高い数値を指したという。
現在、機能性食品は用法、容量が定められている医薬品とは異なり、摂取に関しては消費者の自己判断に任せられているが、高齢者や生活習慣病患者は医薬品との併用が多いため、相互作用のリスクが多く伴う。食べあわせも含め、機能性成分の吸収率を向上させるための研究を今後も続けていきたいとまとめた。
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