納豆の有用性、ポリアミンの機能性など最新研究報告〜第7回「納豆健康学セミナー」
2010年12月13日(月)、WTCコンファレンスセンターで、全国納豆協同組合連合会主催の第7回「納豆健康学セミナー」が開催された。納豆の魅力や機能性など、納豆研究の第一線で活躍する研究者の発表が行なわれた。

納豆のポリアミン〜さらなる飛翔〜
自治医科大学さいたま医療センター循環器病床医学研究所 准教授 早田 邦康

ポリアミンのアンチエイジング効果、世界的に注目

早田氏は2004年より本セミナーで、納豆に多く含まれるポリアミンの機能性を紹介している。2007年のセミナーでは、ヒトが納豆を食べ続けると血中ポリアミン濃度が上昇することを報告。また、マウスにおいてもポリアミンを多く含む餌を食べると、血中ポリアミン濃度が上昇し、寿命が延長することを報告している。

ポリアミンについては、2009年頃からアンチエイジング効果が世界的にも注目を浴びるようになり、オーストラリア、フランス、ギリシヤ、米国、スイス、スコットランドなどの13のチームが研究発表を次々に行なっているという。

加齢により、体内でのポリアミン生成能が低下

ポリアミンはすべての生物の細胞内で合成される物質で、ヒトの代表的なポリアミンはスペルミンとスペルミジン。天然の食品では大豆などの豆類に多く含まれるが、醗酵でより濃度が高くなる。納豆はポリアミン濃度が最も高い食品の一つ。

スペルミジンとスペルミンを体内で合成する酵素は加齢によって低下する。ただ、食物からの消化管内のスペルミンとスペルミジンはそのまま吸収され、体内の臓器や組織に移行するということが確認されている。

炎症誘発因子LEA-1の抑制が老化防止のカギ

あらゆる疾患が細胞の炎症により生じるが、炎症を誘発させる因子であるLEA-1というタンパク細胞の発現をスペルミンとスペルミジンが抑制することも分かっている。 炎症誘発因子であるLEA-1は加齢でも増加する(加齢によってスペルミンとスペルミジンが合成されにくくなるため)。

スペルミンとスペルミジンを外部から積極的に補うことでLEA-1の発現を抑制し、細胞の慢性炎症が原因となる老化や生活習慣病を緩やかにする効果が期待できるという。

納豆で、血中のポリアミン濃度が上昇

世界の長寿国の上位にランクインされる日本人の食生活は、主食が米で、副食には古くから大豆製品(納豆、豆腐、味噌、醤油)が用いられ、おやつにも小豆やきなこ(大豆)が使われてきた。

豆類の中でも、とくに大豆は天然の食品の中では最も高濃度のポリアミンを含む。納豆を平均60g(1パック)程度毎日食べ続けると、血中のポリアミン濃度が上昇することが証明されている。

ポリアミン高含有食品、長寿に貢献

ビタミンなどの抗酸化物質がアンチエイジング効果を発揮すると考えられているが、少なくとも現在の日本人の80代、90代の人は、抗酸化物質を積極的に摂取しているとはいえない。

ポリフェノールなどの抗酸化物質の効果は疫学調査でのレベルであり、効果が証明されているとは言い切れない。抗酸化物質以外の成分が、実は健康長寿をもたらしている可能性が高い、と早田氏。

例えばシイタケ、あさり、ブロッコリー、キャベツ、かぼちゃ、タコ、ほうれんそうなどには抗酸化物質の他に大量のポリアミンが含まれている。ポリアミンが多く含まれる食材こそ、アンチエイジングに貢献し、生活習慣病になりにくい食材ではないか、と早田氏はまとめた。


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