都市排水に由来したエストロゲン類の汚染と動態
京都大学 田中 宏明
|
ヒトから排出される女性ホルモン様物質、オスの魚類のメス化が懸念
2005年〜2009年、化学物質の内分泌かく乱作用に関する日英共同研究事業の研究テーマに「排水由来エストロゲン作用の削減効果の評価に関する研究」がある。
下水処理場から排泄されるさまざまな物質の中でも、ヒトから排出される女性ホルモン様物質がオスの魚類をメス化させることが懸念されている。
英国、とくにイングランドではいたる所で魚類の同体化現象が観測され、中には80%が同体という場所もある。特に下水処理場放流先の河川でこの現象が観測されていると田中氏。
下水処理に時間をかけ、オゾン処理するとエストロゲンが除去
ヒトの尿や使用された汚水中にエストロゲンが排泄されており、しかも下水処理過程でエストロゲン除去が行われていない。結果、河川の魚類が仔稚期にエストロゲンに曝露し、オスの魚類に不可逆な性かく乱が起こっていることがわかったという。
英国の下水処理場は、日本に比べエストロゲンが多い。晴天時は生物処理に時間をかけるが、雨天時は合流式下水方式でのバイパス処理のためではないかと推測されている。
エストロゲンについては、下水処理に長い時間をかける、さらにオゾン処理を加えることが大幅な削減につながると田中氏は指摘する。京都では織物の染色除去のために、下水処理に時間をかけ、さらにオゾン処理を行なっている。そのため、エストロゲン物質のEE2が全く検出されていないという。