政府はもっと「消費者への情報提供、普及啓発」を
清水氏は、食品機能と健康ビジョン研究会が2009年に行なったアンケート調査を報告。対象企業は機能性食品関連企業373社(2/3が食品関連、他に薬品や化粧品他製造業、研究企業含む)。
この調査から、「企業が機能性食品の研究開発や普及のため政府に求める役割」について、289社が「消費者に対する情報提供、普及啓発」を求めていることが分かったという。
行政への要望の上位3では、「新たな機能性表示の制度化の検討、特定保健用食品の審査基準の明確化」「粗悪品の取り締まり」「特定保健用食品の審査基準の明確化」が挙がった。また、「大学や公的機関で進めるべき調査・研究テーマ」として、食品成分/素材の有効性/安全性のデータベース化、ヒト介入試験の導入、機能性成分の基礎研究、などがあった。
「機能性食品」、司令塔がなく個々で研究
世界各国で食の機能性の研究や普及活動が始まっているが、多岐に渡り取りとりまとめが困難なことは日本と同じ。EUでは国家単独で取り組むには難しいと判断し、加盟国全体の2兆円プロジェクトで動いている、と清水氏は解説する。
日本でも食品機能研究やトクホ商品などが、国家プロジェクトとして進められている。主に経済産業省、文部科学省、農林水産省、厚生労働省がそれぞれ予算計上し、食品機能と安全性という2点を重点的に健康食品への取り組みを行っている。予算はトータルで約100億円に達する。
しかし、「機能性食品」の司令塔はどこにもなく、個々で研究が進められているため、研究や開発が小規模になりがちで、ヒト介入試験もできない。法的定義も作られない状況が何年も続いており、産業上の大きな成果に結びつけるのが困難というのが現状。
日本の健康食品やトクホ商品を世界レベルにするために必要なこと
今後の対策として、司令塔をつくり研究テーマを絞り込む、国民の健康に寄与する食品を開発するためにヒト試験も行なう、その上でビジネスとして世界規模の産業を構築することが求められると清水氏。
さらに、健康表示の国際的な統一が進む中、日本がリーダーシップをとっていくために、まずは有効性の審査基準の明確化が大切で、特にヒト試験の審査基準が確立してないため、これを作成することが急務という。
また、安全性の審査基準の見直し(現在の一日摂取量の5倍量というものは非現実的)、さらにトクホにおいては特に審査内容の透明化と情報公開の促進、有効性と安全性の公的データベースの作成、一度トクホ認可された商品に対しても許可期限の設定と再評価システムを構築する、消費者クレーム窓口・健康被害の届出制度の構築など、日本の健康食品やトクホ商品を世界レベルにしていくために必要と提言した。
臨床栄養からみた機能性食品の開発と展望
徳島大学大学院 ヘルスバイオサイエンス研究部 武田 英二
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食品添加物やインスタント食品でリンの摂取が増加
徳島大学では医学部附属病院の栄養学科で、食品・栄養素の生体での代謝や作用、健康増進効果、疾患治療効果について臨床研究を行っている。講演では食品の機能について最新研究を報告。
近年、食品添加物やインスタント食品の影響でリンの摂取が増えている。リンは欠乏するとくる病や骨軟化症を招くが、摂り過ぎると骨繊維症や骨粗鬆症、慢性腎不全、心不全が生じる。また、近年では加齢促進も問題視されている。骨粗鬆症予防については、カルシウムを積極的に摂り、リンの摂取制限をすることが大切と武田氏。
リン過剰摂取、骨の疾病だけでなく血管機能も障害
最新の研究から、リンの過剰摂取は骨の疾病だけでなく血管機能をも障害し、動脈硬化の原因となることが明らかになっている。さらに慢性腎不全の患者にリン制限を行なった低タンパクの食事療法を行なったところ、透析導入を遅らせることができたと武田氏は報告。
また、低GI食(低グリセミック・インデックス食)は糖代謝障害や脂質代謝障害の予防及び治療に有効であることをデータで示した。さらに、ストレスを客観的に評価する方法についても研究中であると述べ、醗酵人参エキスの抗ストレス作用をヒト試験で明らかにしたデータを提示した。
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