アンチエイジングなど、世界から注目
されるクワの機能性と応用利用

2010年5月18日(水)、東京ビックサイトで開催された第9回ヘルスフードエキスポで、岩手大学 地域連携推進センター センター長・鈴木幸一農学部教授が「クワ」の機能性研究の最新成果を報告した。

クワの機能性研究と応用
岩手大学 地域連携推進センター センター長 農学部教授 鈴木幸一

世界的に注目を集めはじめているクワ

クワの機能性や応用利用について、鈴木教授は以下のように述べた。
クワは蚕の餌として知られるが、種類も豊富。ログワの根皮は桑白皮(ソウハクヒ)という漢方生薬で、利尿・解熱効果で知られる。クワ茶やクワ葉のてんぷらなどでも親しまれている。木質としてのクワは硬く丈夫で、最高級材に属し、昔から杖や楽器に利用されていた。

そのクワも、生糸産業の衰退により、クワ畑が放置されることが多くなっている。クワは成長が速く毛虫がつきやすいため、手入れには労力が必要。

一方で、クワが世界的に注目を集めはじめている。オランダではクワを天然の強壮剤として利用している。ブルガリアでもテキスタイル(繊維)ではないクワの利用方法に注目するなど、ヨーロッパ全体で非繊維としてのクワが人気を集めている。

インドでは繊維利用が中心だったが、近年は機能性成分として研究が進められている。他にアジアでは韓国でクワの利用頻度が高く、研究開発も日本より早く行なわれた。今では麺類、海苔といった日用食品にも利用され、韓国の食文化で重要なものの一つとなっている。ただ、アメリカと中国ではその有用性がほとんど知られていない。

クワ付加価値で、もう一度産業の復活を

クワの抽出成分に血糖値抑制効果があることは、実は日本人が発見した。これは1-デオキシノジリマイシンという成分が作用する、というプロセスも判明している。その他にも肺ガン細胞の活性抑制効果、動脈硬化阻止(悪玉コレステロールLDLへの抗酸化)、免疫賦活効果、オキシデスペラトールというアントシアニンの一種である強力な抗酸化成分が含まれ、アルツハイマーやパーキンソン病の改善などの研究が進められている。

国内で衰退傾向にあるクワだが、付加価値でもう一度クワ産業の復活をと、鈴木氏はいう。とくに長寿、アンチエイジングで、クワは期待以上の効果を発揮するのではないか。

メタボリックシンドロームの諸症状の改善に有用

クワの有効性研究については岩手大でヒト試験が進められている。なかでもメタボリックシンドローム症状に、とくに有効な数値を示すデータがでている。74歳のやや肥満傾向の男性に1日3回クワ茶を毎日半年飲み続けてもらったところ、体重が10キロ減少し、血糖値、中性脂肪値、コレステロール値、γ−GTP値の全てが改善し正常値になった。

大学職員20名をランダムに抽出しヒト試験(男女とも平均年齢26歳、期間は2ヶ月、1,88gのクワの抽出物を1日3回摂取)では、体重の減少が認められたが80%、認められなかったが20%で、前者はウエスト値の変化やBMI値の変化も認められた。

免疫賦活作用、ヒト試験を今年6月から実施

クワには強力なアンチエイジング成分があると考えられるが、デオキシノジリマイシンに血糖値上昇の抑制効果、オキシデスペラトールに抗酸化作用があることしか解明されていない。

ラット実験で、クワの抽出物を注射、経口で注入したところ、B細胞とマクロファージが増加し、免疫賦活作用が解明されている。霊芝やマイタケ(Bフラクション)より高い数値を示したが、その成分と効果の作用機序については解明されていない部分も多く、ヒト試験が今年6月から行なわれる段階である。

今後は、クワの機能性だけでなく、クワ食文化の復活と普及を日本全国に発信したいと鈴木氏。昨年、岩手でクワ茶祭りが開催されたが、こうしたイベントを今後も全国展開していきたい。

クワ文化の復活、養蚕イノベーションについては東北地域全体で取り組みが進められている。震災復興に役立てることができないかという研究も進められている。 また、セシウム137の除去効果が注目されているが、クワには耐塩性があるため、被害が甚大であった沿岸部、原発問題エリアでも必ず有効利用できるはず。


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