健康食品やトクホ商品、表示や機能性
評価など巡る検討事項

2011年6月2日(木)、主婦プラザエフ(東京都四ッ谷)で、「薬業健康食品研究会 平成23年度シンポジウム」が開催された。消費者庁食品表示課担当官、消費者委員会の松本恒雄委員長(一橋大学大学院教授)らが、健康食品やトクホ商品の表示や検討課題について講演した。

基調講演T「健康食品の表示の課題と取り組み・今後の方向性について」
消費者庁 食品表示課長 相本浩志

健康食品市場、2010年に2兆円規模

周知のことだが、「健康食品」には明確なカテゴリーがない。「健康食品」はあくまでも食品であることを消費者も提供者もしっかり認識しなければ表示問題は中々進展しないと相本氏。

いわゆる「健康食品」は、2010年で2兆円市場(内5,500億円が特定保健用食品)に達している。今後も堅調な拡大が予測される。

薬品市場が1兆円であることからも、健康食品のニーズが非常に高くなっていることがわかる。特定保健用食品も、範疇としては食品であるが、特定の保健効果の表示が許可された食品であり、現在955件が認可されている。

表示には、消費者庁長官の許可、安全性や効果は食品安全委員会と消費者委員会の許可、薬事法抵触の有無については厚労省の調査が必要であるなど複雑なプロセスを踏まなければならない。大企業でも骨の折れる作業で、中小企業にとっては非常にハードルが高いものになっていると相本氏はいう。

トクホ商品、検討事項が拡大

保健効果の表示は、現在トクホ商品のみだが、保健効果が明らかに期待できる健康食品も数多く存在し、表示方法についてはここ数年議論が繰り返されている。これまでトクホ商品ではない健康食品が健康効果について誇大・虚偽表示しているケースが多く見受けられることが最大の課題であった。

最近はトクホ商品でも、一度許可を受けた商品が再審査を受ける必要があるかどうか、許可商品であっても許可を一時停止する仕組みの必要性など、検討事項が拡大していると相本氏はいう。

検討事項は大きく3つ。まず「トクホ商品の表示許可手続きの透明可」。公表すべき情報の範囲や審査基準の明確化、情報公開請求、再許可品目、実質的な失効品目の取り扱いの運用状況など、実態を把握する必要性がある。また許可品目の機能性成分の新たな科学的知見の収集方法など消費者委員会の議論も踏まえ検討が必要とされている。

2つ目が「トクホを含む健康食品そのものの表示・広告のあり方」。健康増進法と景品表示法が連携していないことの非効率性を解消、拡大するインターネット販売への監視業務の強化などが求められている。3つ目が「新たな機能性表示の可能性の研究」。次々と判明する食品の機能性について正確に評価するための事業を推進するべきではないか、という点。

外部機関の活用で、科学的知見に基づいた機能性の評価

3つ目については中立的な外部機関の活用が有効ではないかという方向で議論が進んでおり、業務委託で行なう予定という。

さらに、新たな成分に関わる保健の機能の表示を認める可能性について、外部機関に委託し研究を進めていくことも期待されていると相本氏。

委託機構は学者、技術者などから成るパネルを設置し、その下に個別の成分ごとの機能性評価専門チームを設け、それぞれのチームにおいて学術論文の収集や、諸外国の制度の実態把握、場合によっては疫学調査などを行ない、最新の科学的知見に基づいた機能性の評価を行なう計画という。

現在新規事業として70百万円の予算を確保、食品の機能性のより効果的な表示で、多くの国民に理解されることが期待されると相本氏はまとめた。

基調講演U「健康食品の表示の検討と今後の方向性・取り組みについて」
消費者委員会 委員長 一橋大学大学院法学研究科教授 松本恒雄

トクホ商品、再審査や再評価制度がないことが最重要課題

いわゆる「健康食品」がかかえる問題点は、まずは健康被害と松本氏。あきらかにインチキな商品は減少傾向にあるが、成分を濃縮することにより作用が高まることや過剰摂取による健康被害が報告されている。また健康食品の普及により医療を受ける機会を失うことが近年激増している。さらに、効果・品質が不均一で類似商品との比較が困難であるなど、「経済的被害」というトラブルも起こりやすいと松本氏は指摘する。

トクホ商品は、近年は許可プロセスが複雑であることより、再審査や再評価制度がないことのほうが最重要課題となっている。安全性に疑いが出ても、食品安全委員会が判断を下すまで表示を取り止めさせる制度がないことが問題、と松本氏。現在、対処策として、再審査手続きの制度や再審査手続き期間中の表示許可の一時的停止措置、更新制度の導入などが検討されているという。

消費者にわかりやすい表示方法の仕組みの確立を

健康食品そのものの表示を規制する法律は薬事法、食品衛生法、健康増進法、JAS法、景品表示法、特定商取引法と多岐に渡り非常に複雑である。トクホ商品と栄養機能食品には法律上の定義があるが、健康食品には明確な定義がないため、規制するのは極めて困難。消極的な定義として「医薬品ではないが、健康の保持増進に資する食品と称して販売され、消費者がそれを期待して購入しているもの」といった定義で個別に判断していくしかないと松本氏。

まずは錠剤、カプセル型の健康食品からでも消費者にわかりやすい表示方法の仕組みが確立されることが期待されると松本氏はまとめた。


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