「食品添加物や残留農薬の被害が心配」との声
まず唐木氏は、日本の食品は極めて安全で、心配すべきは微生物による食中毒だけであると結論を述べた。多くの消費者は行政アンケートなどで「食品添加物や残留農薬による健康被害が心配」と答える傾向があるが、そうした悪影響は実際には一切報告されていないのが科学的事実、と唐木氏。
例外があるとすれば食中毒で、特に戦後日本の食糧難で混沌としていた時代、数百人単位で食中毒で亡くなっている。今年は、ユッケ事件や欧州で拡大する食中毒事件が大変な問題になっている。しかし、食中毒については、高度成長期に生活が豊かになるにつれ死者数は大幅に減り、ここ数年は毎年数名が報告される程度と唐木氏はいう。
実際に、食中毒にかかる人の数は年間で毎年3万人前後とされているが、報告されていないものが圧倒的に多い。実際には300万人以上(年間)と予測され、食中毒になった人の数は戦後から増減していない。
しかし、医療や薬品の発達にともない食中毒になっても致死に至る件数が非常に少ないことや、致死に至る程の悪質なケースは激減している。ただ、それでも食中毒は食の安全の最大の問題であることは間違いないと唐木氏。
どの国でも1000件に1件の違反品が報告
そもそも人間は誤解する生き物で、人間の判断の多くは「ヒューリスティク」と呼ばれる直感的なものである。危険を逃れるため、人は瞬間的に判断を行なう必要があり、これまでの知識や経験などの情報を総動員する。生命に関わる危険情報や利益情報は絶対に無視することなく頭にインプットするものの、安全情報については無視するという過ちを犯す。
例えば、「中国食品は危ない」という情報が多くの消費者に刷り込まれている。これは冷凍餃子事件や粉ミルク事件に端を発しているが、確かにそうした事件はあったものの、その後もそれ以前も、中国製食品の違反件数はアメリカやその他欧米諸国からの食品よりも多いわけではなく、国内産のものと比較しても同程度である。どの国でも1000件に1件くらいは健康被害のない程度の些細な違反品が報告されており、危険レベルは同等というのが科学的分析結果であると唐木氏。
メディアは危険な側面だけを強調する
放射線問題もそうだが、メディアは安全面を報道する必要がなく、食についても「不安だ、危険だ」という側面だけを強調し報道する。
人間は信頼する人の判断をそのまま受入れるという習性がある。メディアが怪しい、危険と報じればそれがそのまま消費者の声となり、必ずしも正確とはいえない安全性が保たれるという仕組みになっている。
・
・