今、消費者に求められていること
〜第20回「食品添加物メディアフォーラム」

2011年6月14日(火)、大手町サンケイプラザで、第20回「食品添加物メディアフォーラム」(主催:日本食品添加物協会)が開催された。生活協同組合コープこうべ参与の伊藤潤子氏が、長年消費者問題に関わってきた立場から、消費者に求めることなど講演した。

人々の消費の見識、2003年頃から顕著な乖離

3月に発生した東日本大震災。伊藤氏は神戸在住だが、震災・原発問題発生後、ペットボトルやおしめ、粉ミルクが店頭からなくなるという状況を目の当たりにし、消費者の見識が乖離していることを痛感したという。この乖離は、2003年頃から顕著になってきたと、伊藤氏は次のように述べた。

消費者問題や消費者運動を振り返るといくつか段階があった。戦後は食糧不足や粗悪品の横行などが主な問題で、今では考えられないような事故が多発していた。例えば、食中毒で命を落としても、現在のような取り上げられ方や騒ぎにはならず、とくに珍しいものではなかった。

その後、経済の発展、情報の普及と共に、構造問題の段階に突入していった。商品を提供する企業や販売側が勢力を伸ばし、圧倒的な成長を遂げるが、それで消費者の意識変化が起こり、問題の顕著化、組合の結成、消費者運動の活発化が生じた。

2003年頃のBSEや産地偽装問題を境に変化

消費者意識の高まりは、最終的に行政不信というところに行き着き、先進国との格差に気付いた消費者団体は法の整備を求め、2003年頃に立て続けて起こったBSE問題や産地偽装問題などを契機に、行政の変化が見られ、消費者と生産者、消費者と行政の間にあった格差が是正されてきた。

この2003年頃を境に、消費者関連法、製造物責任法、消費者契約法、消費者基本法などの法整備が進み、消費者は救済・保護される立場から、主体的に行動し、解決する当事者へと変化を遂げた。

しかしながらその根底には行政不信の問題が根強く残っている。そのためには、行政やメディア、販売側も、消費者に固定観念が生まれないうちに科学的知識を注入する努力をすることが重要である。

科学的知識を注入する努力を

組合で関わってきた多くのトラブルにも変化があった。例えば、組合員として着色料のピンクのカマボコは不要と考えていたが、彩りが欲しいという他の組合員の要望や、ピンクのカマボコが実際は一番売れているという現実があり、安心・安全という視点のみで、多くの人の要望をかなえる機会を奪ってはいけないという結論に達した。

スライスハムについても亜硝酸塩や結着剤を使うことや輸入豚を使って商品開発がされることに抵抗があり大規模な運動も起こったが、亜硝酸は野菜由来で、体内でも作られていという科学的事実、結着剤を使用しなければ原料の多くが破棄されてしまうなど、国産豚にこだわる理由の曖昧性もあり、新しい形態のスライスハムを受入れるべきだと見識の変化があった。

また、遺伝子組み換え作物に対しても反対の立場から納得の立場へと変化があった。時代の変化とともに新しいことが起こったが、それに率直に向きあうことが消費者とっては重要である。

消費者自身も変化を受入れることが求められる

2003年に食品安全基本法が制定、食品安全委員会が発足し、自治体での条例制定も充実し、消費者団体が求めてきた食品の安全行政はひとまず整ったといえる。しかしここからの課題は、それらが社会生活の中でいかに定着していくかである。

それぞれが、社会状況が常に変化していることを受入れ、常に新しいステージがあることを認識しなければならない。食の問題についてはどんどん変化が起こっており、世界経済や科学の発展とも複雑に絡み合っている。ある程度は行政や専門家に任せ、快適で有意義な消費生活が送れるよう、消費者自身も変化を受入れていくことが求められる。


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