人々の消費の見識、2003年頃から顕著な乖離
3月に発生した東日本大震災。伊藤氏は神戸在住だが、震災・原発問題発生後、ペットボトルやおしめ、粉ミルクが店頭からなくなるという状況を目の当たりにし、消費者の見識が乖離していることを痛感したという。この乖離は、2003年頃から顕著になってきたと、伊藤氏は次のように述べた。
消費者問題や消費者運動を振り返るといくつか段階があった。戦後は食糧不足や粗悪品の横行などが主な問題で、今では考えられないような事故が多発していた。例えば、食中毒で命を落としても、現在のような取り上げられ方や騒ぎにはならず、とくに珍しいものではなかった。
その後、経済の発展、情報の普及と共に、構造問題の段階に突入していった。商品を提供する企業や販売側が勢力を伸ばし、圧倒的な成長を遂げるが、それで消費者の意識変化が起こり、問題の顕著化、組合の結成、消費者運動の活発化が生じた。
2003年頃のBSEや産地偽装問題を境に変化
消費者意識の高まりは、最終的に行政不信というところに行き着き、先進国との格差に気付いた消費者団体は法の整備を求め、2003年頃に立て続けて起こったBSE問題や産地偽装問題などを契機に、行政の変化が見られ、消費者と生産者、消費者と行政の間にあった格差が是正されてきた。
この2003年頃を境に、消費者関連法、製造物責任法、消費者契約法、消費者基本法などの法整備が進み、消費者は救済・保護される立場から、主体的に行動し、解決する当事者へと変化を遂げた。
しかしながらその根底には行政不信の問題が根強く残っている。そのためには、行政やメディア、販売側も、消費者に固定観念が生まれないうちに科学的知識を注入する努力をすることが重要である。
・
・