ユッケ問題から考える食中毒〜食育の
重要性 〜第12回メディアとの情報会

2011年6月20日(月)、ベルサール八重洲で、第12回メディアとの情報会「ユッケ問題から考える食中毒―食育の重要性―」が開催された。食中毒に注意を払う必要のある時期、国内ではユッケ問題が発生、海外ではO-104が猛威を振るっている。現状を専門家が解説した。

食中毒の現状と対策について
厚生労働省医薬食品局食品安全部監視安全課課長 加地 祥文

腸管出血性大腸菌、加熱や消毒処理に弱い

加地氏は食中毒について次のように解説した。
食で何らかの健康被害があった場合、症状の程度に関わらず食中毒と広く定義される。ただ、一人の場合食中毒と断定することが難しい。同じ食品を食べても食中毒の症状が発症する人としない人がいるなど個人差がある。重篤な健康被害が複数名、同時期に発覚した時に大きなニュースとなる。

今回の富山県を中心に発生した腸管出血性大腸菌による食中毒事件では、肉を生で食べた人で数名の方が亡くなり、重症者も報告された。腸管出血性大腸菌とは、動物が糞尿を介して腸管内に生息させた菌で、食品や飲料水を汚染し、少量でも発病することが知られているが、加熱や消毒処理に弱いこともわかってる。

対策としては、食肉は中心部までよく加熱する(75度で1分以上が目安)、野菜はよく洗浄することが調理現場で必須。もちろん畜場の衛生管理、食肉店での二次汚染対策を十分に行なうこと、低温保存の徹底も重要である。

平成8年には伝染病として指定

今回の事件で腸管出血性大腸菌という言葉がよく知られるようになったが、過去にも井戸水、牛肉、レバ刺し、ハンバーグ、牛肉たたき、ローストビーフ、シカ肉、貝割れ大根、キャベツ、メロン、そばなどでこの食中毒は発生しており、平成8年には伝染病としても指定されている。

感染した場合、感染後1〜10日の潜伏期間を経て、初期感冒様症状のあと、激しい腹痛と大量の新鮮血を伴う血便が伴う。発熱は比較的少なく、重症になった場合は溶血性尿毒性症候群を併発し、意識障害や致死に至ることもある。

今年10月までに新たな基準を策定

厚労省では、今回の事件について関係情報を収集・集約し、国立感染症研究所の疫学専門家を現地に派遣、原因究明調査の支援や再発防止の観点から都道府県等における生食用食肉を取り扱う営業施設への緊急監視を行なっている。

また生食用食肉を提供する飲食店において、営業者間の取引の際に衛生基準に基づく生食用の加工を行なっているか否かを文章で確認するよう、各自治体に指示・依頼をしている。

消費者に生食のリスクが共有化されていないことは問題、特に乳幼児や高齢者が死亡したり重篤な症状になるため、生や加熱不十分なレバーなどの牛内臓や牛肉を食べないよう周囲も注意することが大切。生食用の肉の取り扱いや流通については、今年の10月までに新たな基準を策定することで動いているが、こうした事件が発生してしまった以上、基準はかなり厳しいものになることが想定される。

腸管出血性大腸菌0-104型
国際獣疫事務局名誉顧問 小沢 義博

ドイツ国内での感染者はおよそ3500人超

小沢は欧州で猛威を振るう腸管出血性大腸菌0-104型について次のように解説した。
ドイツ・ハンブルグ近郊で2011年5月初旬、超強毒性腸内細菌の新型0-104が発生した。爆発的な感染拡大は終息しつつあると報道されたが、予断を許さない状況が続いている。ドイツの保健当局によると死者はすでに39名、スウェーデンの死者も含めると40名と報告されている。

被害者が集中しているドイツ国内での感染者はおよそ3500人を超えている。ここ10日では新たな患者の報告は低水準で推移しているため、沈静化に向かっていると認識して良い。感染源、ドイツ北部で生産されたモヤシなどの発芽野菜と特定されているが混入経路はいまだわかってない。

牛や豚の堆肥が原因ではないかと指摘

今回の食中毒の特徴として、通常かかりやすい乳幼児や老人ではなく、大人が多く、その2/3が女性であった。これは生の野菜サラダを好んで食べる女性との関係も指摘されている。

豆もやしは大腸菌を含め細菌が増殖しやすい食品であり、カイワレ同様、栄養価の高さからアジアだけでなく欧州でも人気を博しているが、0-157やサルモネラのリスクも比較的高いことから、注意を促している。

今回の感染源と見られている豆もやしは屋外で有機栽培されていたものであったことから、牛や豚の堆肥が原因ではないかとも指摘されている。これまでオーガニックや健康ブームから注目を浴びてきた有機野菜だが、一方でリスクの可能性についても目を向けなければならない。


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