健康維持や生活習慣病予防のために、
サプリメントの正しい情報提供を

2011年9月9日、東京都立産業貿易センター浜松町で開催された「コ・メディカル産業展」で、一般社団法人日本臨床栄養協会事務局の中谷 朋代が「栄養学の基本とサプリメントの正しい情報提供」と題して講演をした。同協会のサプリメントバドバイザーの活動などについて報告した。

栄養学の基本とサプリメントの正しい情報提供
一般社団法人日本臨床栄養協会事務局 中谷 朋代

サプリメントバドバイザーの認定者数が伸び悩み

厚労省は2002年に保健機能食品等に係るアドバイザリースタッフの養成についてのガイドラインを発表しており、消費者が健康食品やサプリメントを安全に、そして適切に選択・摂取するために正しいアドバイザーが必要であるという方針を打ち出している。

日本臨床栄養協会のサプリメントバドバイザーには業界からも高い期待が寄せられていたが、アドバイザーの育成スタートから10年が経過した現在も、その社会的知名度は低く、認定者数も伸び悩んでいると中谷氏。

今年3月の厚労省発行の消費者向け冊子「健康食品の正しい利用法」で、健康食品の摂取についてメーカーや販売元だけでなく、医師や薬剤師、さらにアドバイザリースタッフへも相談することを推奨する文章がようやく記載された。そうしたことから、アドバイザリースタッフへの期待が再び高まりつつあるが、今後の活動において課題は多いという。

アドバイザーの認定者は全国でおよそ4500人

サプリメントアドバイザーは、そもそもサプリメントを積極的にすすめるための資格ではないと中谷氏。健康維持や生活習慣病予防のために、サプリメントをどのように取り入れていくべきか、一人ひとりの日常生活も視野を入れて総合的にアドバイスできる人材を育成することを目標としている。

そのため、資格取得のカリキュラムは「サプリメント概論」にはじまり「栄養学」「食生活学」「生活習慣病概論」「臨床薬理学」「食品機能と安全性」「国内外の関連法規」など、幅広い分野が必修科目となっている。

実際のアドバイザーは相談を通じて、相談者の日常の食生活に起因する諸問題を明らかにし、まずは食生活の改善を促す。その上で不足している栄養素があれば、サプリメントの活用を必要に応じて勧めると中谷氏。

さらに、過剰摂取を防ぐためのアドバイスや摂取している医薬品との相互作用への注意、アレルギー問題など、健康食品やサプリメントに関する様々な注意喚起も行う必要がある。

このように膨大な知識と知識のアップデートが必要であることから、サプリメントアドバイザーの資格には更新制度が設けられており、継続した学習が必要になっていることも特徴という。現在アドバイザーの認定者は全国でおよそ4500人。年に一回行われるテストの合格率は平均40%台と難関で、簡単に取得できる資格ではない。

ビタミンやミネラルは不足傾向に

厳しい条件をクリアし育成されたアドバイザリースタッフを協会では幅広く認知させ、サプリメントの正しい摂り方を広く国民に啓蒙したいと考えている。とはいえ、2008年に国が行ったサプリメントや健康食品に関するアンケートでは、「以前はサプリメントを利用していたが、現在は利用していない」という答えが増えている。理由としては、「効果が期待できない」「どのような効果があるのかよくわからない」「安全性に不安がある」「過剰摂取になりそう」など。

とはいえ、現代の食生活では、糖、タンパク質、脂質といったエネルギー源は十分に補えても、ビタミンやミネラルといった人体の機能調整を司る栄養素の摂取については、誰もが不足傾向にある。そのため、上手なサプリメント利用や知識を得ることは誰にも必要なことと中谷氏。

顧客の生活習慣を改善した上で適切に勧める

現在、サプリメントアドバイザーの資格を取得し、自らの経営する漢方薬局でアドバイスを行うA氏は、サプリメントの正しい情報を得るためには製造元やメーカーの主催する講演に参加するだけでは情報の客観性が乏しく、限界があるため、アドバイザーとしての勉強会に参加できることは非常に役立っていると述べる。しかしながら、勉強会の参加費も手頃なものではないため、モチベーションを維持していくのは大変であるとも付け加えた。

アドバイザーとしては、安易にサプリメントや健康食品を販売するのではなく、顧客の生活習慣を改善した上で、本当に必要であれば勧めるが、医薬品が必要な場合は医薬品、サプリメントの場合はサプリメントと適切に判断し、可能な限り短期間で相談者の症状を改善していくことが使命ではないかとまとめた。


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