大量の小麦が使用
財団法人日本醤油技術センター常務理事の田上氏はしょうゆの歴史と科学について次のように解説した。
スーパーに行くと醤油と名のつく多種多様の商品があるが、JASでは「醤油」ではなく「しょうゆ」と表記を統一しており、分類すると、「しょうゆ」「しょうゆ加工品」のいずれかになる。
私たちが日頃口にしている「こいくちしょうゆ」には、あまり知られていないが、実は大量の小麦が使用されている。しょうゆの製造に使われる大豆は蒸したものを使用し、大豆と小麦とほぼ同じ量使用し、炒って砕き、混ぜ合わせそれに種麹を接種して「しょうゆ麹」を作る。この麹を食塩水と混合してタンクに入れて「諸味」とし、半年から一年間、醗酵と熟成に十分な時間をかけた後、搾って生のしょうゆが作られる。
しょうゆ製造の歴史を遡ると江戸時代の中期にあたる。1712年頃の和漢三歳図絵にはすでに記されている。しかし、みそやしょうゆの原型と言われる「穀醤(こくびしお)」は既に弥生時代には存在しているとみられている。
日本のしょうゆにはバラ麹が用いられている
その後、少しずつ進化を遂げて現在の日本独自の製法に至っている。大陸ごとの食文化の大きな違いがあり、西アジアは麦芽を利用した醗酵文化圏だが、東アジアはカビを利用した醗酵文化圏である。同じ東アジアでも中国大陸では主にクモノスカビやケカビが利用され、日本ではコウジカビの利用が発展した。この結果、日本のしょうゆ造りにはバラ麹という種類の麹が用いられるようになっている。
こいくちしょうゆの主原料は大豆、小麦、塩であり、大豆はタンパク質、小麦はでんぷんとタンパク質の供給をする。食塩は塩味の素で、醸造中の腐敗を防止する重要な役割を担う。
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