この疾患は肝硬変や肝細胞癌などの重篤な疾患に進行する可能性が高い。またNAFLDの発症はインスリン抵抗性の発症を伴い、2型糖尿病とも明らかに関連している。
しかし、肝脂質の代謝の改善、一般的には減量をターゲットにした食事療法により、NAFLDの発症の予防や最小限に抑えることができることが知られるようになっている。ここ数年、コーヒーの飲用が肝機能の向上に効果があることが示唆されている。
1日に3杯のコーヒー、肝硬変の発症などで有意なリスク減少
世界各国の疫学的研究で、コーヒーの飲用が慢性肝疾患有病率の低減に効果があることが示されている。1日に少なくとも3杯のコーヒーを飲む人では肝硬変や肝細胞癌の発症リスクに明らかに有意な減少が見られる。NAFLDにおいては、NAFLDと診断された患者にコーヒーの飲用と肝脂肪の重症度の間に逆相関の関係があることが示されている。
また、ヒトにおいて、コーヒーの肝疾患発症抑制の原因となる効果は実証されていないが、コーヒーの飲用がNAFLDに有効的に作用する可能性は十分考えられる。
カフェイン入りとデカフェで効果の違いが明らかに
ネスレリサーチセンターでは10人規模の小さい臨床実験を繰り返しており、例えば成人男性ではコーヒーの定期的な摂取で脂肪発現に関わる遺伝子の低下などが明らかになりつつある。またカフェイン入りとカフェイン無しのデカフェでは、効果の違いが明らかとなりつつあり、カフェインそのものは糖代謝には影響を与えないが、肝臓には有益であると思われるデータも示されつつある。
そのため、カフェインだけが人体に与える影響のみならず、カフェインにコーヒーポリフェノールが加わったときの相乗効果についても注目が集まっている。コーヒーのどの成分がどのようなプロセスで人体に有効な作用を発揮するのか、ようやく動物研究も行われている段階である。
一つずつエビデンスを積み上げ、疾病予防、特に肝臓脂肪や糖尿病といった誤った食生活による生活習慣病関連の予防へのコーヒーのメカニズムを明らかにしていきたい。