食によるアンチエイジング、「カロリス説」と「抗酸化食」が注目
食とアンチエイジングとの関連について研究を続けている坪田氏。アンチエイジング研究で、「食」は重要なテーマとなっている。中でも少しずつ認知度が上がっている理論が「カロリーリストリクション(カロリス説)」と「抗酸化食」である。
カロリスは、通常の食事からの摂取カロリーをおよそ80%程度に減らすと、カロリー制限を行わない状態に比べ成人病を中心とした疾病リスクが低下するというもの。
老眼、脱毛、肌の老化といった老化現象が著しく遅延することがサルでも証明され、日本古来より伝えられる「腹八分目」理論が科学的に見直されるきっかけとなった。
「抗酸化食」は、身体の諸機能の酸化(=老化)を防ぐために、とりわけ野菜やフルーツに多く含まれるファイトケミカル成分を積極的に摂取することが良いとする食事方法である。
サーチュイン遺伝子の活性化による寿命延長のヒトでの報告はまだ無い
坪田氏は自身の専門である「目」についてのアンチエイジングも食からのアプローチを行い、ルテインやアスタキサンチン、レスベラトールといった機能成分による眼の疾患予防の可能性について研究をしている。
とくに赤ワインやブドウの果皮に含まれるポリフェノールの一種であるレスベラトールは、先にあげた「カロリス」の観点からも注目されている。カロリスにより、通常は殆ど機能していないが、ヒトが誰でも持っているサーチュイン遺伝子という長寿遺伝子(マサチューセッツ工科大学レオナルド・ギャランテ教授により発見)がONになり、寿命延長が期待されている。
このサーチュイン遺伝子をカロリス以外の方法でONにする方法がレスベラトールの摂取で、先日NHKで取り上げられたことで、店頭からはレスベラトールサプリメントが消えるという騒動にもなった。
レスベラトールを摂取することでサーチュイン遺伝子が活性化することは事実だが、サーチュイン遺伝子が活性すれば寿命が延びるかについては、「まだそうした報告はヒトではない」と坪田氏。またカロリスによるサーチュイン遺伝子の活性とレスベラトールによるサーチュイン遺伝子の活性には若干の違いがあるため、レスベラトールサプリメントを摂取したからといって、暴飲暴食、腹八分目でない食事をしていいという誤解はしないでほしいと坪田氏は指摘する。
しかしながら、レスベラトールの摂取で糖尿病由来の眼の疾患、光障害、ぶどう膜炎などの炎症は抑えられるというデータも出ている。レスベラトールが眼の疾患、とりわけ老化由来のものには効果的であることが示唆される。とはいえ、光障害やぶどう膜炎の炎症はカロリスや適度な運動でも抑えられることが報告されているため、レスベラトールだけが突出した効果があるとはいえないと坪田氏。
ルテインの積極的摂取で「黄斑」の状態を整える
また「抗酸化食」の観点から、ほうれん草やケールなどに豊富に含まれるカロテノイド成分のルテインに注目が集まっている。私たちの目の中にある「黄斑」と呼ばれる水晶体の後ろにある網膜の中心は、まさにルテインそのものといっても過言ではなく、この「黄斑」の状態が眼の健康状態を左右していると坪田氏は解説。
・
・