2005年-2009年発表の原著論文を精査
日米欧では健康・栄養関連の研究がどのように行われ、どのような違いや課題があるのか、佐々木氏率いるチームは、世界各国で発表されている研究論文を国別・機関別・著者別にランキングし、文部科学省と共同研究で分析を行い、2010年に研究成果を発表している。
佐々木氏らは健康・栄養関連の研究発表の論文データベース(Scopus)のうち、2005年から2009年の5年間で発表された原著論文から栄養系で13誌、医薬品系で6誌の重要な媒体を選び、これらに掲載された原著論文の中から、エビデンスがグレーのものや論文として不十分なものは除き、7,695本を精査・抽出。
さらに、著書を所属機関別に分類し、「ヒト研究論文」か「動物実験論文」に分けた。結果、「ヒト研究論文」については、欧米の研究機関・大学がランキングの上位を占めたという。
「ヒト研究論文」提出ではハーバード大がトップ
また、世界のトップ機関で、栄養に関する研究論文は医学部よりも栄養学部又は農学部に所属する栄養学科に多いことが明らかになった。中でも最も多く「ヒト研究論文」を提出しているのがハーバード大学で145本、全論文に占める割合は2.4%。
しかし「動物実験論文」では、ハーバード大学はベスト30にも入らず、1位はフランス国立農学研究所の74本、全論文に占める割合は4.1%であった。つまり「ヒト研究論文」が強い機関と「動物実験論文」が強い機関は必ずしも一致しない。また、いずれの論文にせよランキング上位国では、人間栄養学を学ぶ拠点となる大学にはほぼ栄養学部あるいは学科があることが明らかとなった、と佐々木氏は報告した。
「ヒト研究論文」提出では国立健康栄養研がトップ
一方、日本の状況をみると、「ヒト研究論文」では独立行政法人国立健康・栄養研究所が国内では最高位、世界では46位で22本の論文を発表している。国内2位は世界114位の東北大学で11本、国内3位は世界129位の徳島大学で6本。「動物実験論文」については、日本の1位は世界29位の北海道大学、東北大学、京都大学の3校、各大学とも9本の論文を提出している。
国別にみると、「ヒト研究論文」の数では、日本は第9位の195本、「動物実験論文」はアメリカに続く第2位の162本であった。しかし機関別でみると日本はほとんど上位に入らない。
日本は、研究機関として「健康栄養学に強い」といえる機関や大学がほとんどなく、個人が頑張っているという状況である。また、上位10位以内にランキングした大学で栄養学の学科がある大学はわずか2機関のみである。
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