食品を4区分し、新基準設定
現在の暫定規制値は、一般的に健康への影響はないとされているが、「より一層の安全と安心を確保する」という観点から現在の暫定規制値で許容されている年間線量5ミリシーベルトから、年間1ミリシーベルトに基づく新基準に引き下げる方針と山口氏はいう。
新基準では、特に配慮が必要なのが「飲料水」「乳児用食品」「牛乳」、それ以外を「一般食品」の4区分とした。新基準では放射性ストロンチウム、プルトニウム等を含めた基準値が再設定されている。
放射性セシウムについては、飲料水は200Bq/kgから10Bq/kgに、牛乳は200Bq/kgから50 Bq/kgに、一般食品(野菜、穀類、肉、卵、魚、その他)は500Bq/kgから100Bq/kgに、新設の乳児用食品は50Bq/kgとなる。(注Bq:ベクレル)
どの年代にも考慮された基準値
飲料水についてはWHOの基準に従い、基準値を10Bq/kgとしたという。一般食品についてはすべての年齢区分での限度値のうち、最も厳しい(小さい)値から、全年齢の基準値を100Bq/kgとしたことで、どの年代にも考慮された基準値になったと山口氏。
牛乳と乳児用食品については、子どもへの配慮(食品安全委員会が小児の期間については感受性が成人より高い可能性があると指摘)から、一般食品の新基準値100Bq/kgの半分の50Bq/kgを新たな基準値とした、と経緯を述べた。
移行で混乱が起きないよう配慮
また、新たな基準値への移行に際しては流通や販売市場に混乱が起きないように、準備期間が必要な食品(米、牛肉、大豆)については一定の範囲で経過措置期間も設定している、と新基準策定までの基本となる考え方を説明。現在、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会に新基準値の答申を行っている最中で、基準値の告示は3月を予定、施行は4月を予定しているという。
新基準の制定で国民が「食」への信頼を取り戻すかどうかの疑問は残り、とくに経過措置期間の混乱を懸念する声もあるが、厚労省としては新基準値が十分安全な数値と考えていると強調した。
新たな基準値に対するさまざまな意見
一般社団法人消費生活コンサルタント 森田満樹
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消費者のゼロベクレル志向が加速しかねない
多くの消費者は行政が断片的に出す情報に混乱していると森田氏は指摘する。
食品安全委員会は放射性物質のリスク評価、厚生労働省はモニタリング検査の数値や基準値、農水省は生産現場の混乱を表す数値、文部科学省は給食の現場に対する現状報告、消費者庁は新たな表示の対応や変更など、それぞれが出す情報はバラバラで、消費者が安心できるような情報がないため、このままでは「ゼロベクレルであってはじめて安心できる」という消費者の「ゼロベクレル志向」が加速しかねないと懸念を示した。
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