医療現場でのメディカルハーブの可能性
2012年2月22日(水)、東京ビックサイトで統合医療展セミナーが開催された。この中で、NPO法人日本メディカルハーブ協会の理事の入谷栄一氏が「医療現場におけるメディカルハーブの可能性」を紹介した。


在宅診療では代替医療のほうがベスト

入谷氏はアガリスクなどの研究を行う傍ら、勤務先の病院で3年前からハーブ外来を行っている。それは入谷氏が在宅診療(訪問診療)を行うようになったことと深い関係がある。在宅の患者さんの場合、外出できないために医薬品を処方しても良くならないことが多い。

例えば腰痛の患者さんは寝たきりで、腰痛緩和には、医薬品を処方するよりも、マッサージや鍼灸・アロマテラピーといった代替医療を用いた方が効果的なことが多い。代替医療であれば看護師にもできることが多い。さらに在宅の患者さんを抱えて介護疲れしている家族もケアもできる。そのため入谷氏は代替医療を切り替えるようになったという。

患者にとって選択肢が増えることが重要

中でもハーブには大きな可能性を感じていると入谷氏。夜中に緊急で呼ばれ、何も持たずに診療に行かなければならない場合でも、だいたいどの家庭にもハーブやハーブ製品があり、緊急処置として代用できることが多い。患者さんや介護する家族にちょっとしたハーブの知識を身につけてもらえば、十分にセルフケアに役立つという。

世界の医療現場でも、一次医療として80%はハーブが使用されている。フランスやドイツの医師の70%は患者にハーブを処方している。日本でも実は医師の100%がハーブを使っていることが分かったという。例えば便秘薬、この成分はセンナというハーブである。

入谷氏は現代医療である、西洋医療を中心に据えているが、現代医療が100%ではないことを実感している。もちろん代替医療も100%ではなく、統合しても100%になるわけではないが、患者にとって選択肢が増えることが重要であり、代替医療の知識を増やすことは医師も患者の可能性を高められると断言する。

100%ではなく「めざせ!快適生活」を目標

入谷氏自身も喘息の持病を抱えている。吸入ステロイドは効果的ではあるが、疲労、天候、ストレス、睡眠不足、女性であれば妊娠や生理など、日常のちょっとしたことがきっかけで喘息の発作が起こり、症状が悪化する。

これらの「ちょっとしたきっかけ」という部分は、医薬品では対応できない西洋医学の弱点である。それが、病気ではないからだ。こうしたことにハーブは効果を発揮する。人によってはすごく効果があるが、効果が全くない人もいる。ただ、ひどくなる人はいない。100%ではなく「めざせ!快適生活」を目標に、できるだけ日常を快適に過ごすことが持病を悪化させず、完璧ではない医薬品に頼らず、症状を抑える秘訣であると入谷氏は説明する。

健康の維持増進、疾病の予防などの機能

実際にハーブを使う場合は、まず基礎を知る必要がある。「ハーブ=おしゃれな飲み物」というイメージが一般的のようであるが、「生活に役立つ香りのある植物」というのが本来の定義であり、コーヒー、紅茶、サラダなどもハーブになる。「どんなハーブがいいですか?」と聞かれることも多いそうだが、特定の疾病や疾患がなく健康であるのなら、サラダを食べれば十分だと入谷氏。

健康に直結するようなサラダの食べた方としては旬の野菜、しかも7色の野菜が入ったサラダを食べることがおすすめという。赤リコピン、黄色βカロテンといったように、野菜の色素成分が私たちの健康に役立つ。野菜を食べることで害が出る人はいない。つまり安全性が高いということである。

しかし特定の症状で悩んでいる場合はサラダだけでは効果を感じることはないだろう。そこでメディカルハーブが登場するが、この定義は「健康の維持増進、疾病の予防などで用いる機能を有する植物」というもの。目的意識を持って摂取すれば、お茶でもメディカルハーブになる、ということである。その一例がトクホ商品である。

長期的に継続的に良い結果を得られる

高血圧に悩む男性が降圧剤を途中で止めてしまったり、飲み忘れたりすることは非常に多いが、トクホ商品であればどこでも誰でも購入できる。特に男性にでも続けられるというメリットがあり、ハーブの知識や健康の知識をつける良いきっかけになると入谷氏。

例えば烏龍茶のポリフェノール、カテキンなどの知識もトクホ商品のおかげで浸透している。ハーブティーもその感覚で利用すると良い。お茶としてエキスを抽出し飲むだけなので安全性はもちろん高い。ただし、しっかり成分を抽出することが目的なので、熱湯で成分を蒸らすこと、ティーパックタイプであれば最後までパックを絞るなどをしなければ、成分が十分に得られないと入谷氏はアドバイスする。

ハーブを勉強するようになると、効果を求める人が多くいるが、それであれば医薬品の方が良い。ハーブに即効性があればそれは医薬品になるということを理解し、長期的に継続的に良い結果を得られるというハーブの効果を大事にしてほしいと入谷氏。

快適な状態を保つために生活に取り入れる

ハーブは自分で選べるとよりいい。今すぐ眠りたいのであれば睡眠薬のほうがよく効くが、たまたま眠れない日が続くのであればカモミールのハーブティーを飲んでみる、風邪を引きそう、引いている人が近くにいる時はエキナセアのハーブティーを飲む。快適な状態を保つためにハーブを生活に取り入れるのが、一番良いハーブとのつきあい方である。

他にも医療現場でよく使われるハーブとしては、喉の痛みなどでセージやタイム、不眠や神経過敏にカモミール、パッションフラワー、バレリアン。ストレス性高血圧にリンデン(菩提樹)、膀胱炎にクランベリー、初期のうつにセント・ジョーンズ・ワート、貧血にネトル、初期の認知症の改善にイチョウ葉などがある。

医師であっても、植物科学や薬理学などをしっかり勉強すれば、ハーブの薬理効果をきちんと説明できるはずである。日本の医療現場でもっとハーブが活用される日がくることを期待していると入谷氏はまとめた。


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