特別用途食品、高齢化で増える表示相談
2012年2月21日(火)、東京ビックサイトで、「第4回 メディケアフーズ展2012」が開催された。セミナーで、公益財団法人 日本健康・栄養食品協会 栄養食品部長の矢吹昭氏が「特別用途食品の概要」について講演した。


企業からの表示認定の相談が増加

公益財団法人 日本健康・栄養食品協会は国民の健康的な食生活を支えることを目的に1985年に設立。現在、消費者庁の指導のもと、健康の保持・増進に寄与する「保健機能食品(特定保健用食品〈トクホ〉)、栄養機能食品、特別用途食品」などに関する情報の収集・調査、正しい知識の普及活動や申請に係る支援活動を行っている。

同協会が支援や管理を行う「特別用途食品」には、高齢化が進み生活習慣病患者が増加する中、企業からの表示認定の相談や問い合わせが年々増えているという。

2011年に「特別用途食品」を再度見直し

「特別用途食品」とは「病者用、嚥下困難者用、乳児用、妊産婦用、授乳妊婦用」などの特別の用途に適する旨の表示をする食品」で、表示については国の許可を受ける必要がある。また、「病者用」「妊産婦・授乳婦用粉乳、乳児用調整粉乳」「嚥下困難者用」があり、表示許可については、許可基準があるものはその適合性を審査し、許可基準がないものは消費者庁が個別に評価を行っているという。

この制度は「特定保健用食品」が創設された1991年に、これまで「特別の用途に適する旨の表示」として基準が定められていた主に病者向けの食品が、スライドする形で再定義され、1996年の栄養表示基準制度の開始に伴い「特別用途食品」の表示はより明確なものとなり、2011年には再度見直しが行われた。

新通知では「病者用」がさらに細かく定義

この見直しは2007年から作業が始まっていたが、今回これだけの時間がかかった理由として、「途中に消費者庁が新設されたこと」が大きい。さらに状況の変化、主に「高齢化の進展と生活習慣病患者の増加とそれに伴う医療費の増大」「医学・栄養学の進歩」「栄養機能表示制度など特別用途食品制度を取り巻く状況の変化」など、さまざまな理由が重なったためという。

23年通知版では、これまでの区分で「病者用」とされていた食品が「低タンパク質食品」「アレルゲン除去食品」「無乳糖食品」「総合栄養食品」とさらに細かく定義され、タンパク質の制限を必要とする腎臓疾患の人や激増しているアレルギー患者により配慮したものとなった。

審査体制が強化

また、対象者への適切な情報提供がより一層必要となるため、医師や管理栄養士等による適切な助言指導の機会を保障し、一定の広告も認めることを許可している。さらに、制度の認知度を高めることを許可するなど、購入者にとっても表示や製品の理解がより高まるようなものに見直されている。しかし、一方で審査体制は強化され、表示許可を得るための企業側のハードルが高くなった感がある。

基本的許可基準は次の3つ。「特別の栄養的配慮が必要な病者に適当な食品であること(医学的・栄養学的)」「特別の用途を示す表示が病者用食品としてふさわしい」「成分又は特性が試験で確認されるもの」で、すべての区分に共通している。

また概括的許可基準としては「使用方法の遵守により効果があり、使用方法が簡明なこと」「品質が通常の食品に劣らないもの」「利用対象者が相当程度に広範囲か、または病者に特に必要とされるもの」で、これらを基準にさらに個別の規定が設けられている。

例えば、「低タンパク質食品」であれば、先の規定の他に「タンパク質含有量は通常の同種の食品の含有量の30%以下であること」「熱量は通常の同種の食品の含有量と同程度またはそれ以上であること」「ナトリウム及びカリウム含有量は通常の同種の食品の含有量より多くないこと」「食事療法として日常の食事の中で継続的に食するものであり、これまで食していたものの代替となるもの」といったように、さらに厳しい規定が定められている。乳児用、妊産婦用、嚥下困難者用も同様に厳しい。

「特別用途食品」と「栄養機能食品」の併記表示は認められていない

特別用途食品の許可取得には、申請料金9,800円の他、食品の分析を行う際の試験手数料がかかる(食品により大きく異なる)。また、よくある質問事項で「特別用途食品」と「栄養機能食品」の表示を併記することができるか、というものもあるが、表示の併記は認められていない。

というのも特別用途食品は「病者、乳幼児、妊産婦等が発育、健康の保持・回復等の用途の為に供することが適当な旨を医学的、栄養学的表現で記載し、かつ、用途を限定したものであるのに対し、栄養機能食品は、特定の栄養成分の補給・補完を目的とした食品で、健康で異常のない人が一日に必要な栄養成分を摂れない場合にのみ、補給・補完のために利用する食品であり、両制度の目的が大きく異なっているためである。

しかしながら、今後も特別用途食品は増加傾向が見込まれ、制度やマークを認知させることがより一層求められる、と矢吹氏はまとめた。


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