クリルオイル〜サラサラ血液&イキイキ血管 〜「健康博覧会2012」セミナー
2012年3月15日(木)、東京ビッグサイトで「健康博覧会2012」セミナーが行われた。この中で、オメガ3系不飽和脂肪酸を多量に含むクリルオイルに着目し、原料供給を行う白鳥製薬株式会社による、クリルオイルの機能性に関する講演を取り上げる。


オメガ3系脂肪酸、「リン脂質型」に優れた作用

セミナーでは同社の担当者がクリルオイルの有用性について以下のように解説した。
南極海域に生息するオキアミ(形態がエビに似ている甲殻類の生物)から抽出される食用油クリルオイルが、今非常に注目を集めている。クリルオイルはアンチエイジング効果が高いアスタキサンチン(カロテノイドの一種で抗酸化成分)とオメガ3系不飽和脂肪酸を40%以上もリン脂質として含有している。

オメガ3系不飽和脂肪酸のなかでも「リン脂質型EPA・DHA」は、精製された単品のEPA・DHAよりも体内での吸収と生理作用に優れ、細胞膜を構成しているリン脂質としてすみやかに構成されるという利点を持つ。

これまではオメガ3系脂肪酸そのものの健康効果が注目を集めてきたが、一般的な脂肪に溜め込まれる「トリグリセリド型」ではなく「リン脂質型」であるということが非常に重要であることが近年判明している。

深海性魚類やクジラなどが極めて厳しい低温環境に生息しているにも関わらず細胞膜や血液の流動性・柔軟性が保たれているのも、オメガ3系不飽和脂肪酸の摂取が多いからだけでなく、リン脂質型のオメガ3系不飽和脂肪酸を多量に摂取しているからではないか、という研究もある。

リン脂質型オメガ3系脂肪酸、小腸経由で速やかに吸収

またグリーンランドのイヌイットやアラスカのエスキモーが、かなりの高脂肪食を摂取しているにも関わらず、彼らが日常的に摂取している食品には「リン脂質型」のオメガ3系不飽和脂肪酸が多量に含まれるため、循環器疾患にかかる割合が極めて低いという疫学調査もある。

もちろん精製された単品のEPA・DHAの機能性も十分に優れている。そのため国内では1990年に「閉寒性動脈硬化症に伴う潰瘍、疼痛、冷感の改善」、1994年には「高脂血症」の治療薬としてEPAが認可されている。また、米国でもEPA・DHAが「高脂血症」の治療薬として認可され、EUでも「Novel Food」(食品添加物を除く、新規の食品や食品生物についてその安全性を評価・認証する制度)として認定され頻用されている。

しかしトリグリセリド型オメガ3系脂肪酸よりもリン脂質型オメガ3系脂肪酸のほうが小腸経由で速やかに吸収されて各組織(とくに細胞膜)に分布することが明らかとなっており、一般的な魚油由来のトリグリセリド型オメガ3系脂肪酸よりもオキアミ由来のリン脂質型オメガ3系脂肪酸のほうが、人体にはより効果的である。

細胞膜の機能に極めて重要な役割

そもそも脂肪のなかでも流動性のある不飽和脂肪酸は細胞や血管を柔軟に保ち動脈硬化を防ぐ働きがある。不飽和脂肪酸はオメガ3系、オメガ6系、オメガ9系に分類されるが、現代の食生活ではオメガ6系(コーン油、ゴマ油など)が過剰になりつつあり、オメガ3系(魚油、紫蘇油、亜麻仁油等)が圧倒的に不足していることが指摘されている。

特にオメガ3系脂肪酸は動脈硬化を遅らせ、悪玉コレステロールと中性脂肪を減少させる働きがあり、血流を促進させ血圧を下げ、免疫システムを強化することもさまざまなデータが明らかにしている。

とくにクリルオイルに多量に含まれる「リン脂質型オメガ3系不飽和脂肪酸」のリン脂質は、ヒトの細胞や細胞小器官を構成する主要成分であり、細胞膜の機能に極めて重要な役割を果たしている。

細胞膜や細胞内膜を横断する分子の輸送にもリン脂質が必須であるため、体の細胞・組織・器官の機能はさまざまなリン脂質脂肪酸の生理学的利用により左右されているとも言い換えられる。しかし先進国における現代の食事は、リン脂質が含まれる量が圧倒的に減少しており、食事から摂取しているリン脂質は総脂質量のわずか5%程度ともいわれ、そのうちリン脂質型のオメガ3系脂肪酸はさらにごくわずかしかないため、意識的に食事から摂取することが非常に重要である。

有効成分の相乗効果

ラット実験のデータで、体内に吸収されたオメガ3系不飽和脂肪酸が細胞膜のリン脂質組織をすみやかに変化させ、主としてリン脂質2重層により構成される細胞膜の電気抵抗を減少させ、膜の流動性を上昇させることが明らかになった。

つまりオメガ3系不飽和脂肪酸の摂取により血管や腸、皮膚の細胞膜の流動性=柔軟性が向上することが分かった。他にも強い抗酸化作用、抗アレルギー作用、血清脂質改善作用、皮膚トラブルの改善作用など多くの健康効果を発揮するデータが示されている。

しかしクリオオイルのさまざまな健康効果は、有効成分の相互の相乗効果による部分が大きいと考えられる。とくにアスタキサンチンとの相乗効果に期待ができる。オメガ3系などの脂肪酸やアスタキサンチン、CoQ10などの抗酸化成分を単独で摂取するよりもクリオオイルで摂取したほうが効果が高いだけでなく、経口摂取後90日以上経過しても効果が持続する。

循環器疾患に対する有用性が明らかに

ところで国内では2008年4月より「特定健康診査・特定保健指導」が実施されているが、この検査指導は血圧・コレステロールをはじめとするメタボリックシンドロームの早期発見と改善を目的としている。これは日本人の三大死因である悪性新生物(がん)・心疾患・脳血管疾患のうち、その3割を占める心疾患と脳血管疾患について、メタボリックシンドロームとそれを原因とする動脈硬化が危険因子とされているからである。

メタボリックシンドローム及びそれを原因とする動脈硬化は血管障害に深く関与することが明らかとなっており、血液や血管の老化を抑制し血行を促進させることが、生活習慣病の最も基本的な予防法であるという認識も定着しつつある。そのため、血流改善・血管柔軟性強化機能を有し、血液や血管のアンチエイジングに働きかける食品素材は注目を集めているが、循環器疾患に対する有用性が明らかにされつつあるクリルオイルはこれからさらに注目を集めることは間違いない。

またクリルオイルは粉末などへの加工性も高く、汚染が極めて少ない海洋から採取されるオキアミを原料としているため安全性が非常に高いこともこれから加工食品としての活用が期待される。



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