免疫システムの異常、腸内細菌が関与
15年もの間、自身の腸内に寄生虫(さなだ虫)を飼って研究をしたことで知られる藤田氏。寄生虫学、細胞免疫学の研究を通して「腸内細菌」の重要性を訴え続けている。
いまや国民病のようにいわれているが、花粉症やアトピー性皮膚炎、喘息などのアレルギー疾患は50年ほど前の日本にはなかった。
なぜこのようなアレルギー疾患の患者が激増しているのか?免疫システムの異常が原因であると挙げられているが、なぜ免疫システムが異常を起こしているのか?藤田氏はその疑問を研究し続け、その結果「腸内細菌の重要性」という答に行き着いたという。
抗生物質や食品添加物で腸内細菌が激減
免疫とは体のどのパーツと関わり、強くなったり弱くなったりしているのか? その70%は腸と関係していると藤田氏。そのため野菜や果物などの食物繊維やビタミン類が豊富な食材を積極的に摂取する、納豆や味噌などの発酵食品(腸内細菌のバランスを整えたり活性化する役割を果たす)を摂取したり腸内細菌の餌となるオリゴ糖なども積極的に摂取することで、腸内細菌の環境を整えることが非常に重要である。
あるいは抗生物質を頻用したり、食品添加物が大量に含まれるようなインスタント食品を過剰に摂取してしまうと腸内細菌は激減したりバランスが崩されてしまうため注意しなければならないと藤田氏は指摘する。
食生活による腸内環境の整備で免疫力の70%が決定
こうした日々の食生活による腸内環境の整備で免疫力の70%が決定されるという。そして残りの30%は「笑いのある毎日、規則正しい生活、運動習慣」で、腸内細菌のバランスを整えるということは「薬や手術では治療できない領域」であることを認識して欲しいと藤田氏。しかも自分にとって最適な腸内環境とは他の人とは異なり、100人いれば100通りのベストな腸があるという。
藤田氏は46年前に数年間インドネシアのボルネオ島に健康調査に行った経験がある。その時に一番驚いたのがその劣悪な生活環境であった。子どもたちは汚物が垂れ流しの川で無邪気に遊んでいる。しかし日本に帰国してから気づいたことは、インドネシアの子どもたちにアレルギー患者がいないことだった。回虫にはかかっているが、花粉症・アトピー・喘息の子どもはいない。かつては日本も同じではなかったか?かつて日本人の回虫寄生率は世界的にみても著しく高かった。
行き過ぎた衛生観念と経済成長、生活環境の改善のおかげで、日本は世界で最も回虫の駆除に成功した国となったが、その一方でアレルギー疾患を拡大させているのではないか? 寄生虫が体内で何か良いことをしている可能性はないのか?そこから藤田氏の寄生虫研究は始まったという。
がんもアレルギー疾患も体内のバランスの病気
そして最終的に寄生虫をすり潰してアトピーを治癒させる物質を抽出することに成功。食事を与えるたびに尻尾に電流を流すという究極のストレスを与えることで、数日でアトピーになったラットにこの物質を投与したところ、あっという間にアトピーは完治した。しかし、まさに世紀の大発見だと思われたその矢先、落とし穴が待っていた。
それは免疫細胞の一つであるヘルパーT細胞のバランスが壊れてしまうということであった。ヘルパーT 細胞は機能的にTh-1とTh-2に分類されるが、細菌やウイルスなどを攻撃、破壊して感染を防御し、マクロファージを活性するTh-1細胞と、カビやダニに反応して抗体を作るTh-2細胞は免疫全体のバランスを保つために互いに牽制しあいながら拮抗を保っている。
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