暫定基準値、緊急対応としてはベター
この1年を振り返り、前川氏は次のように述べた。
昨年の原発事故後、食品中への放射性物質の汚染が深刻な問題として世間を震撼させ、この問題に厚生労働省としてもすぐに対応しなければならなかった。初期対応としては食品中の放射性物質に関する暫定規制値の設定だ。しかしこれはあくまで緊急の対応で「暫定」という言葉を用いるほかなかった。
このことについては未だに賛否両論の意見が飛び交っている。「暫定」という言葉が消費者への不安と不信を煽った。しかしその一方で緊急対応としてばベターだったという見方もある。そして次に行った取組みが食品中の放射性物質に関する検査である。厚生労働省が各自治体に要請し検査が開始され、これは現在も続けられている。
この検査を1年間継続してきたなかで明らかとなったことは、放射性ヨウ素の検出は1年経過した現在はほとんど認められなくなる一方で一部の食品からは放射性セシウムが検出されることとなり、「半減期」という言葉が一般の消費者にも理解されるようになったことであろう。
福島では20品目以上が出荷制限対象に
そして検査によって暫定規制値を超える放射性物質が検出された食品は回収、破棄されることとなり、これも現在継続している。
さらに、原子力災害対策本部からの要請もあり、暫定規制値を超えた食品の発生エリアにおいては出荷制限もおこなうという対策をとった。もちろん事故から1年経過した現在は、条件を満たしたエリアであれば出荷制限の解除も行っている。出荷制限に関する情報は決して多くはないが、実は現在も福島では20品目以上が制限対象となっており、また千葉県や神奈川県でも「茶」などは出荷制限の対象になったままである。
4月から「新基準値」に
そして「暫定」と名付けられていた規制値がこの4月より見直しされる。これまでも安全性は確保されていたと厚生労働省は強調するが、より一層食品の安全と安心を確保する観点から、現在の暫定規制値で許容している年間線量5ミリシーベルトから年間1ミリシーベルトに基づく新基準値に引き下げるというものである。
名前は「暫定規制値」から「新基準値」に変更となる。新基準値で年間1ミリシーベルトという数値を採用した背景には、食品の国際規格を作成しているコーデックス委員会の現在の指標でも年間1ミリシーベルトを超えないように設定されているから、という理由がある。
より安心・安全が確保された食品
また新基準値では食品区分も改訂される。これまでは「飲料水」「牛乳・乳製品」「野菜類」「穀類」「肉・卵・魚・その他」と食品群で分類していたが、新基準値では特別な配慮が必要かどうかを重視して、「飲料水」「牛乳」「一般食品」「乳児用食品」と分類される。
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