プロバイオティクス、感染防御や免疫調節作用など
プロバイオティクスは生物間の共生関係を意味する生態学的用語を起源としている。「腸内細菌(=腸内フローラ)のバランスを改善することにより、宿主(人など)に有益な作用をもたらす生きた微生物」と定義されている。
この微生物を含む食品(ヨーグルトや乳酸菌飲料)はプロバイオティクスと呼ばれる。プロバイオティクスは腸内細菌バランスを良好にし、便通改善、感染防御、有害物質の生産抑制、免疫調節などに有益であることが知られている。
腸内細菌数、ヒトの細胞数よりも圧倒的に多い
横田篤氏は腸内細菌のバランスとメタボリックシンドロームとの関係について次のように述べた。
細菌は35億年前から地球上に存在し、生物は細菌と共存することで進化を遂げてきた。これは人も同様である。人は母胎にいるときは無菌状態だが、生まれた瞬間から腸内細菌が一斉に棲みつくようになる。
母乳で育てられる乳児の便の95%以上はビフィズス菌だが、離乳後には一気に減少し、さまざまな種類の細菌が腸内に棲みつく。腸内細菌数(平均100兆個)はヒトの細胞数(60兆個)よりも圧倒的に多い。この腸内細菌と宿主(ヒト)との相互作用については1970年代より盛んに研究されている。
腸内で、酢酸、プロピオン酸、酪酸を生成
これまでヒトの大腸は小腸で吸収されなかったものが便になり排出される役割と単純に考えられていたが、近年、大腸内の腸内細菌の発酵作用で主に酢酸、プロピオン酸、酪酸の3種類が生成されていることが明らかになっている。
この3つの生産物は、大腸の健康増進のために大腸上皮細胞の栄養になっている。また、大腸の蠕動運動を引き起こす起爆剤となっていることが判明している。とくに、酢酸は大腸から血中に移動し肝臓で脂肪合成に使われることが明らかとなっている。
酢酸、プロピオン酸、酪酸の3つは短鎖脂肪酸と呼ばれ、有用代謝産物とされている。しかしその一方で、腸内では有害代謝産物を生成する。とくに二次胆汁酸は発がん物質として注目されている。
二次胆汁酸、強力な殺菌作用
胆汁酸は胆汁の主成分として含まれる化合物で、食事中の脂質の消化吸収を補助する役割を果たす。そのため高脂肪食を摂取すればするほど胆汁からの分泌量も増大する。分泌されて消化吸収の手助けをした胆汁酸は腸内細菌と反応すると二次胆汁酸に変換される。
この二次胆汁酸は非常に強力な殺菌作用があるものの、DNAの損傷を引き起こしたり、DNA損傷修復酵素の働きを阻害するなどする。
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