動脈硬化は一種の老化現象
福岡県北九州市の小倉記念病院で、心臓カテーテルの治療をこれまで5万人以上に行ってきた横井氏は、狭心症・心筋梗塞を予防する方法は「ある」と断言する。狭心症や心筋梗塞は心臓の筋肉に酸素や栄養を送り続ける冠動脈の動脈硬化によって引き起こされる。
動脈硬化は生活習慣病とされているが、一種の老化現象。加齢とともに動脈の内側はアテロームにより細胞の繊維化など弾力性が失われていく。これは誰も同様で、年齢的には40代から60代と十分健康なはずであるが、これが引き金となって心臓病や脳卒中を起こしてしまう。
動脈硬化を促進させる危険因子は、まず男性であること・加齢・遺伝の3つ。これらは生来のもので避けられないと横井氏は指摘する。
しかし努力で取り除ける危険因子は7つもある。それは高脂血症・高血圧・喫煙・糖尿病・高尿酸血漿(通風)・肥満・ストレス。これにより動脈硬化の促進はかなり緩やかになるという。
心筋梗塞には2つの起こり方がある
血管の内側は血流で絶えず刺激を受け、血管内膜に傷ができる。この傷はもちろん修復されるが、修復が間に合わず食事から摂取した脂質などが沈着すると、血管の内側の壁は肥厚し、内腔も狭くなり、次第に弾力性が失われ、血管が硬くもろくなる。
この一連の変化が動脈硬化である。この変化が脳の血管で起これば脳梗塞に、心臓で起これば狭心症や心筋梗塞に、足で起これば下肢閉寒性動脈硬化の原因になる。
横井氏は心筋梗塞の治療を最も得意とするが、心筋梗塞には2つの起こり方があるという。1つは、血管内の傷に徐々に脂質などが溜まりニキビのような固まり(プラーク)となり、血管が詰まるというプロセス。
動脈硬化の退縮は食事療法が基本
これは一般的に知られるカテーテルでの治療が可能で、心筋梗塞や狭心症患者の30%がこのタイプであると横井氏。症状としては動いた時に胸が痛くなったり、苦しい感じがする。
しかし残りの70%は、固まりとなったプラークが突然破裂し、血が固まり血管がつまるという起こり方で、この症状は脂汗の出るような痛みで、実はカテーテルでの治療や予防も非常に難しい。そのため、70%というかなりの人が、前触れもなく突然脂汗の出るような激痛に襲われ、カテーテル処置では難しいタイプの心筋梗塞や狭心症に罹患している。
そこで心筋梗塞にならないように、プラークを小さくし動脈硬化を退縮させることが鍵となる。これには食事療法が基本だと横井氏はいう。
食事療法と運動療法と禁煙が有効
とくにプラークそのものともいえる悪玉コレステロールを減らすには食事療法が非常に重要で、それでも改善しない場合に限り薬物療法(スタチン)が有効である。
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