生肉のメニューに厳しい規制
今回の講習会では、主に最近動きのあった食品衛生の規格基準についての解説を行った。
昨年の10月、牛肉を生食用として加工する際の基準や成分規格が新たに制定された。
この規制については、平成10年に通知された「生食用食肉等の安全性確保について」で、生食用食肉の衛生基準は厳しく示され、事業者における適切な衛生管理についても指導されていた。しかしながら、衛生基準には強制力がなく、事業者における指導が十分に遵守されていなかったことが問題となっていた。
さらに昨年の四月、焼き肉チェーン店で死亡者が出る腸管出血性大腸菌による食中毒事件が発生。これをきっかけに見直され、この規格基準を遵守しなければ食品衛生法違反になるという、強制力のある基準設定が行われた。
今回の規格基準の対象食品は、牛刺し・牛たたき・ユッケ・タルタルステーキなど、牛肉を生食する際のメニューが対象となった。これにより、牛肉の生食が完全に提供できなくなったということではなく、新たな基準を満たせば消費者に提供することができるが、その基準は非常に厳しいものとなっている。
「抵抗力の弱い者は食肉の生食を控えるべきである」旨を店内やメニューに表示
今回指定された規格基準の概要は、下記の通り。@生食用食肉の加工は、他の設備と区分された場所で行う。A専用の手洗い・シンク・器具が必要。B生食用食肉を扱う人は講習会を受講すること。C肉塊表面から1pの深さを60度以上で2分間以上加熱する方法で殺菌し、速やかに4度以下に冷却すること、など。
生食用牛肉の成分規格としては、@腸内細菌群が陰性でなければならない。A加工した牛肉は定期的に検査を実施し、成分規格に適合していることを確認。記録は一年間保存。となっている。
さらにこれらの条件を満たした生食用牛肉を提供する際には、「一般的に食肉の生食は食中毒のリスクがある」「子ども、高齢者、その他食中毒に対する抵抗力の弱い者は食肉の生食を控えるべきである」旨を、店舗の見やすい場所とメニューに表示することが必要となっている。
牛の肝臓は生食に適さない
さらに今年7月1日より、店頭から姿を消すことがニュースとなり駆け込み需要拡大で世間を騒がせた「レバ刺し(牛レバーの生食)」についても説明が行われた。
レバー刺しについては、食品衛生法に基づき今年7月1日より販売・提供が完全に禁止された。牛肉の生食よりも厳しい取り扱いとなった牛レバーだが、これには理由があるという。
というのも牛肝臓を安全に生で食べるための有効な予防対策が見いだせないと厚生労働省が見解。腸管出血性大腸菌は、牛や豚、鶏など哺乳類や鳥類の腸管内等に生息し、肉やレバーなどに付着すると食中毒の原因となる。フグなどであれば、危険部位が特定されているため、そこを適切な調理で取り除くことができるが、牛の肝臓についてはそうした方法がみつかっておらず、国民の健康を守るためにも牛の肝臓は生食に適さない、と結論付けられたという。
牛レバー、生食用として販売・提供すると食品衛生法違反
従って牛レバーは加熱用として販売・提供することが義務づけられた。
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