高齢化が進んでも、アルコール消費量は増加傾向に
わが国の国民1人当たりの年間平均アルコール消費量は2005年頃からやや減少傾向にある。とはいえ、ここ50年という長いスパンで調査すると大きな変化があるとはいえず、世界的にみると摂取量は決して少ない方ではなく中レベルという状況だ。
多くのヨーロッパ諸国と比べると消費量こそ少ないが、米国やカナダとは同レベル、またアジアの新興大国の中国やインドに比べるとはるかに高いレベルにあるといわれる。
日本で年間アルコール消費量がやや減少傾向にあるのは高齢化が原因と考えられている。しかしながら、ヨーロッパの先進諸国も同様に高齢化社会であるにも関わらず、なぜか消費量は増加傾向にある。その、原因は明らかではない。従って今後日本で、高齢化が進んでもアルコール消費量は増加傾向の可能性も十分あり得ると樋口氏はいう。
この50年、世界各国で女性の飲酒率が上昇
また、この50年の飲酒率の変化をさらに細かく分析すると、世界各国で女性の飲酒率が上がっていることが明らかになっていると樋口氏。日本も同様で、男性の飲酒率は1950年以降大きな変化がないにも関わらず、女性の飲酒率は男性を凌ぐ勢いで上昇、とくに若い女性の飲酒率の上昇がここ数年注目されている。
日本ではアルコールによって生じる問題は健康面だけでなく、社会的問題が多い。代表的なものが飲酒運転と自殺、そして家庭内暴力とアルコールハラスメントである。
飲酒による自身の健康被害だけでなく、他者の飲酒による悪影響の被害も甚大で、1年の酒税で得られる金額のおよそ3倍以上のコストが他者の飲酒による悪影響の被害額として計算される程だという。
WHOで、アルコールの有害な使用を低減するための世界戦略が採択
2010年5月に開催されたWHOの総会では、「アルコールの有害な使用を低減するための世界戦略/Global Strategy to Reduce the Harmful Use of Alcohol」が採択された。
この戦略では、加盟各国がそれぞれの実情に応じて、有効なアルコール問題対策をとることを政策として勧告することを提示している。
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