日本の食生活、世界的にみてもかなり特異な状況
今回の講座では前在タンザニア日本国特命全権大使を務めた中川坦氏が、5年以上に及ぶ現地での生活体験をもとに、日本とは対極の食生活にあるタンザニアと日本の食文化を比較することで、日本の現在の食生活について解説した。
食のあり方は、歴史・気候風土・経済状況によって規定される。アフリカ諸国はまだまだ発展途上であり、現代の日本人の食生活とはまさに対極にある。アフリカのタンザニアと比較した場合、日本の食生活にはどのような特徴がみられるか。それは、日本の食生活が世界的にみてもかなり特異な状況にあるということだ。この現状を認識することが今後の日本の食生活の問題を解決する糸口になるのではないかと中川氏はいう。
タンザニア、野菜も魚もほとんど食べない
中川氏はまずタンザニアの食料事情について解説を行った。タンザニアはアフリカ大陸のなかでも一部海岸線に面している。人口は4,400万人だが、3/4が農村地域に在住、うち8割が農業に従事している。自分たちの食用作物としてトウモロコシ、コメ、キャッサバ、バナナを生産。また、換金作物(輸出用)としてはお茶、コーヒー、綿花、カシューナッツを生産している。
タンザニアでの主食はトウモロコシを粉にし、湯で割った「ウガリ」と呼ばれるものが一般的である。このウガリが日本のコメのような感覚で主食となっている。おかずは極めて変化に乏しく、トマトベースのスープや豆類のスープなどをウガリにつけて食べることが多い。畜産物として牛肉、鶏肉があるが、消費量は多くない(週に1回程度)。野菜も魚もほとんど食べない。
タンザニア人の平均寿命は55.4歳と短命
子どもたちの幸福についてのヒアリングでは「今日ウガリがお腹一杯に食べられること」と答える子どもが多い。炊事環境についても、水が命そのものであり、飲料水の確保が最重要課題になっている。タンザニアの都会といわれる地域でも電気の利用は15%程度で、かまどもなく、七輪か石を使用して炊事する家庭がほとんど。
タンザニア人の平均寿命は55.4歳と短命で、3大死因はマラリア、HIV、結核、そして幼児の死亡率の高さ。タンザニアの人々にとって食事とは、とにかく空腹を満たすためのものであり、質より量が優先され、一日に3度ではなく2度の人も少なからずいると中川氏はいう。
・
・