高齢化背景にホエイプロテインが注目
〜健康的なエイジングのニーズの高まり

2012年11月22日(木)、「アメリカ産ホエイプロテインセミナー〜ヘルシーエイジングとホエイプロテイン」が都市センターホールで開催された。急速な高齢化が進む日本では、健康的なエイジングのニーズが高まっている。高齢者はとくに良質なタンパク質の摂取が必要だが、ホエイプロテインにはアミノ酸がバランス良く含まれているという。

乳タンパクは利益性の高い市場を新たに創造できるだろうか
ジュリアン・メレンティン

機能性食品も、「ナチュラル」のコピーだと売れやすい

1995年にNew Nutrition Business社を設立し、世界の健康栄養食品業界におけるマーケティングの第一人者として世界的に活躍するジュリアン・メレンティン氏。今回は先進諸国で注目を集める「加齢と乳タンパク質及びそれらの製品開発の動向と機会」について解説した。

現在、先進諸国では「ナチュラル」という言葉が大流行している。世界中の人が「ナチュラル」を支持し、「ナチュラル=ヘルシー=健康」という概念が植え付けられつつある。しかし、実際には「ナチュラル」に厳格な定義や規制はない。そのため、「ナチュラル」の内容は多種多様で複雑である。

人工着色料や保存料が入っていなければそれだけでナチュラルなのか? あるいは使用される原材料が少なければナチュラルなのか? 米国ハーゲンダッツでは、わずか5つの成分で作った「よりナチュラル」というコピーのついたアイスが売れに売れまくったという事例がある。機能性食品についてもより「ナチュラル」だと売れやすいとジュリアン氏。

多くの消費者にとって、食品あるいは原料がナチュラル、また素材そのものがナチュラルであるということは健康的に有益と見なされ、商品の最も説得力のあるメッセージになっている。またメディアも、ナチュラルあるいは素材そのものに健康的価値を持つ食品については、常にトレンドを作るための肯定的な報道を過剰に行うため、ナチュラルヘルシーな商品はクレームが少ないというメリットもあるという。

チーズ摂取量と生活習慣病発症の関係

乳製品についてはどうか。世界的にみて、乳製品はフルーツや野菜のような「ナチュラルヘルシー」というイメージが保たれている。乳脂肪や乳製品が心臓病や糖尿病のリスクを高めるという報道がなされた時期もあったが、現在はその説には科学的メスが入れられ、チーズ摂取量の多い男性には心臓病のリスクが少ない、生活習慣病発症のリスクが低減しているといった臨床データも多く発表されている。

豊富なプロテインと脂肪分0%のヨーグルトが爆発的ヒット

従って、乳製品はここ数年でナチュラルヘルシーのポジションを再び確固たるものとしつつあるというのが世界的トレンドである。さらに、乳製品は食品形態、フレーバーに関してフレキシビリティが高く、多くの乳製品企業が商品開発におけるイノベーションに注力している。現在、乳製品は栄養、健康市場における最も活発なカテゴリーとなっているとジュリアン氏。

アメリカ市場でここ数年の爆発的ヒットとなった商品が「ギリシヤヨーグルト」。豊富なプロテインと脂肪分0%というこのヨーグルトは米国人の健康志向とぴったりリンクした。また従来米国で売られていた味の薄いさらっとしたヨーグルトとは全く異なる、濃厚で満足感の高い食感と味、そしてわずか100gのなかに15gのプロテインが含まれるという高い栄養価が、米国人の食指を刺激した。

高タンパクなヨーグルト、世界的な拡大が予測

とくにここ数年、高プロテイン食がウエイトマネジメントや健康維持に重要な鍵となることが米国ではよく知られるようになっているため、「高タンパク」なヨーグルト(乳製品)というのはまさにナチュラルヘルシーな商品として大ヒットとなった。

そしてこのトレンドは今後世界的に拡大するであろうとジュリアン氏は予測する。というのも、乳タンパクの効果や機能性についてはまだまだ消費者に十分認知されてないからである。

これは30年前にプロバイオティクスが発見されたときの状態と非常によく似ているという。乳タンパクは今後、プロバイオティクスのように一大産業になる可能性が高いとジュリアン氏。

乳タンパク、ウエイトコントロールに効果的

さらに幸か不幸か、乳タンパクにとって有利ともいえる背景がある。それは先進諸国が共通して抱える高齢化の問題である。これまで乳タンパクはプロアスリートを対象とした、非常にニッチな素材だった。

筋肉を増強したい男性が運動の前後に補給するものが乳タンパクというイメージは未だに強く、この市場は全人口のわずか2%にすぎない。しかし乳タンパクは筋肉を増強することよりもウエイトコントロールに最も効果的であるということが2010年ごろから実証されつつある。先進諸国では高齢化が進み、サルコペニア(筋肉減弱症)が大問題となっている。

サルコペニアは病気というよりは加齢とともに誰にでも見られる症状であり、「すぐに疲れる」「骨の強度が低下する」「転倒リスクが増加する」などの問題が生じる。70歳以上の男性の15%、女性で25%、80歳以上になると男女ともに50%の人がこのサルコペニアの問題を抱えるようになるため、多くの企業ではサルコペニアの予防、改善に効果的な商品開発の研究を進めている。

サルコペニア対策で、乳タンパクが注目

このサルコペニア対策と予防には、乳タンパクが非常に効果的であることが証明されつつある。高齢者であっても、高タンパクを摂取し続けることは筋肉の低下を予防し、基礎代謝量を増やすことにつながるためウエイトコントロールに役立つというメカニズムだ。しかし高齢者が粉状のプロテインを摂取するかといえば、それは薬のようでもあり食の楽しさとはつながらない。

そこで乳プロテインをヨーグルトやダノン、アイスクリームのような形状にしたものや、フルーツジュースと混ぜたもの、シリアルとのミックスといったような「見た目」「美味しさ」「利便性」を追求した最新商品が世界的に売れ始めている。

乳プロテインの新たな商品化は、高齢者だけでなくもう一つの新たな市場も開発した。それは若い男性層である。これまで若い男性や働き盛りの男性はヨーグルトなどの乳製品を好まなかった。その理由としては、食品そのものにボリュームがないこと、食べても満足感が得られないこと、女性や子どもの食べ物というイメージを持っているということなどが挙げられる。

乳タンパク、摂取後に健康面でのベネフィットを体感しやすい

しかし、各社が口当たりの良い濃厚で満足感が得られる高プロテインのヨーグルトや乳製品を開発したことで、若い男性もどんどん購入するようになっているという状況が欧米では始まっている。例えばオーストラリアのmammothというチューブ状のヨーグルトは、シリアルを食べる時間さえ取れない男性の完全な朝食として大ヒットし、これまで健康について考えたことのなかった男性にもヘルシーな食事を提供することに成功した。

健康市場は景気に左右されにくい。とくにシニア市場はその傾向が顕著であるとジュリアン氏。プロバイオティクスもそうであったように、乳タンパクは摂取した後に健康面でのベネフィットを体感しやすいというメリットもある。

そして乳タンパクはヨーグルトからドレッシング、お菓子まで利用範囲が幅広く、商品開発の余地がまだまだ豊富である。このトレンドとチャンスを見逃さず、健康市場のさらなる活性化に役立ててほしいとジュリアン氏は語った。


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