それにも関わらず、野菜不足(ルテイン不足)や大量のブルーライトを日々浴びることで、若い人の網膜にも問題が生じているのではないかと坪田氏はいう。
ブルーライトでメラトニンの生産時間が狂う
さらに、ブルーライトは網膜内で大量の活性酸素を発生し、網膜を傷つけ黄斑変性を引き起こすだけではない。もう一つの重要な問題がある。網膜はサーカディアンリズム(概日リズム)の調整の役割も果たすため、網膜が傷つくと体内リズムも狂うという。
日中に適度なブルーライトを浴びることで、私たちの体内では夜メラトニンが作られ、メラトニンが睡眠を誘発する。しかし、遅い時間になってもブルーライトを浴び続けると、メラトニンの生産時間が狂うだけでなく、メラトニンの生産量も減少していくと坪田氏。
睡眠障害やうつ病の発症も
つまり、遅い時間にブルーライトを浴びるとメラトニンの生産に異常が生じ、徐々に睡眠障害、うつ病、精神疾患などが発生するという。とくにパソコンやスマートフォン、タブレットなどの普及が明らかに眼病の増加の原因となっている。夜は電子機器の使用を控える、あるいはブルーライト対策用のアイウェアを着用するなどの対策が必要と坪田氏は指摘する。
いずれにせよ、ルテインを日々意識的に摂ると黄斑変性の予防や改善効果があることがわかっている。今後はルテインを豊富に含む植物の開発や黄斑部分や血中ルテイン濃度をより正確に測定することでさまざまな病気を予測できるようなバイオマーカーの開発などにも取り組みたいという。
ケルセチン、イソフラボンの生活習慣病予防機能の科学的エビデンス強化と高含有農作物の作出について
吉川 敏一 AMI理事長 京都府立医科大学学長
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ケルセチンやイソフラボン、4種類の方法で機能性を確認
日本の食卓になじみの深いタマネギと大豆。これらに含まれるフラボノイドであるケルセチンとイソフラボンに注目が集まっている。吉川氏は「ケルセチン、イソフラボンの生活習慣病予防機能の科学的エビデンス強化と高含有農作物の作出プロジェクト」のリーダーでもある。これら食材の機能性は確かだが、そのエビデンスを確立し、高品質の作物を安定的に作ることが必要と吉川氏。
ケルセチンもイソフラボンも、「ヒト疫学調査」「ヒト介入試験」「動物実験」「細胞試験」の4種類の方法で機能性の確認を行っているという。
イソフラボン、骨粗鬆症や更年期障害に有用
タマネギに多く含まれるケルセチンにはアルツハイマー型認知症、眼疾患(ドライアイ、黄斑変性)、脂質代謝(メタボリックシンドローム)、心血管疾患などの効果があることがすでに細胞試験、動物実験で確認されている。ヒト介入試験とヒト疫学調査については検討中であると吉川氏。
大豆に多く含まれるイソフラボンには骨粗鬆症、口腔疾患(ドライマウス)、眼疾患(ドライアイ、黄斑変性)、更年期障害、脂質代謝(メタボリックシンドローム)などに効果があることが先の4種類すべての方法で確認されているという。
これらはいずれも生活習慣病や加齢に伴う疾患であり、こうした機能性の高い食材の摂取により疾患の軽減を目指している。先の4つのレベルでの機能性研究を行うことで、実用化に直結した効果を実証することが可能になるという。
平成25年度までに研究をすべて完了
これらの研究は平成25年度までに全て完了させることが計画されている。現在国内の医学・農学系の大学を中心に10機関で共同研究を行っている。また、高付加価値の農産物を安定的に供給できるように、品種や栽培条件を確立させる研究を農学系の4機関で行っている。
さらに、同じく医学・農学系の大学ではこれらの研究結果を信頼性の高い分析方法でデータベース化することにも力を入れており、衣食農で共同利用できる分析方法とデータベースの構築の実現を目指していると吉川氏。
こうした共同研究は23年からスタートしたばかりで、まだ発展途上だが、予定通り25年中には完了させ、機能性食品の有効活用による健康寿命の伸張、医療費の大幅削減に貢献したいと報告した。