ハーブを取り巻く状況、ここ20年ほどで大きな変化
ハーブはお茶や飴、サプリメントなど身近で、とくに若い女性やナチュラル志向の人々には人気だ。医薬品と比べると、なんとなく体に良い、穏やかな効果・効能を得られるといったイメージが定着している。
ハーブを使用した伝統的な民間療法は、途上国では80%の人々の医療手段にもなっている。先進諸国においても、伝統医療や民間療法に対する信頼は厚い。近年は補完代替医療という考え方も支持され、ハーブの存在意義がますます高まっている。
そうした中で、ハーブを取り巻く状況はここ20年ほどで大きな変化が起こっていると池田氏はいう。ハーブは医薬品のみならずサプリメントとして広く利用されるようになり、同時により明確な有効性・安全性、品質の確保が求められるようになってきている。そうしたことから、ヨーロッパの多くの国々が枠組みや制度作りに力を注いできている。
EFSAのハーブの安全性確保要求高まると予測
EUでは、「ハーブ医薬品」の範囲内でハーブを流通・促進させることを視野に、各国の制度を統合・刷新し、トラディショナルハーブ医薬品の認証に特別措置を設けた規制を2004年よりスタートさせている。
この規制は7年間の猶予期間が設けられ、2011年5月1日から完全実施されたが、これにより欧州市場から撤退を余儀なくされたハーブ製品も多くあり、それらの製品を輸出していた国にとっては深刻な事態となっている。とくに中国では漢方が大打撃を受けた。それがISOにおけるハーブ医薬品の国際標準化のきっかけともなったという。
ハーブはEUではフードサプリメントの主要な素材としても認められているが、まさにこれからEFSA(欧州食品安全機関)によるハーブのヘルスクレームの評価が始まろうとしている。
EFSAはサプリメントの素材として利用されるハーブやその成分の安全性評価に対する考えを2009年に示している。ヘルスクレームの評価に伴い、今後はハーブの安全性確保に対する要求もさらに高まると予測されるという。
FDA食品安全近代化法、多くの義務と責任を課す
一方、アメリカではハーブは1994年にDSHEA(栄養補助食品健康教育法)により、ダイエタリーサプリメントの成分として位置付けられている。DSHEAではサプリメントに対し、有効性・安全性・品質については通常の食品とは異なり、より積極的な科学的アプローチやエビデンスを要求している。
安全性については新規サプリメント成分のガイドラインが公表され、品質についてはサプリメント規制(CGMO)が施行され、とくにハーブ関連企業は対応に追われている。さらに2011年4月1日に施行されたFDA食品安全近代化法(食品安全強化法)では、サプリメントを含む食品の安全性確保のために、事業者もFDAも多くの義務と責任を課されており、より厳しい基準に苦しめられているという。
ハーブのように本来何らかの生理作用を有するものを、どのようなカテゴリーでどのように規制し、より有効に利用することができるのか、元来ハーブを利用してきた欧米でさえ、改めて多くの議論を呼ぶ事態が起きつつあるようだ。
日本においてもそうした海外の状況を参考にしながら、ハーブを用いた製品についてより良い制度化がすみやかになされることが急務だと池田氏はいう。とくにハーブにおけるISOは数年後にはガイドラインが固まることが予測されている。ISOの最大の要求事項は品質と安全性であることに間違いなく、日本でもそのような商品と制度化を強く意識しなければ、ジャパニーズハーブを海外に輸出することも難しいであろうとまとめた。
医食同源の視点から健康食品の開発
京都薬科大学生薬学分野 教授 吉川 雅之
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食物の生体調整機能による薬効を期待
「食品による健康維持」という考え方が少しずつ定着しているが、食物に生体調整機能といった薬効を期待する考え方は東洋医学には元々あるものであった。アーユルヴェーダや中医学では、病気にならないことや予防こそが名医の証であるとされ、医師は「食医」とも呼ばれていた。医師は食事指導を主とし、食事による病気予防や健康維持および未病治療が行われていた。
実際、明時代の薬物書『本草編目』をはじめ、インドのアーユルヴェーダ医学の『チャラカサンヒター』や古代ギリシヤの医師ディオスコリデスの著した『マテリアメディカ』などの医薬学書には、現在では食品として分類される生薬が多数記載されている。今日の『中薬大辞典』や『日本薬局方』に記載されている天然医薬品や漢方剤に配剤されている生薬のなかにも、果物や甘味、香辛料として食用で用いられているものが数多く認められる。
ショウガなど、身近に薬用食品
例えば「ショウガ湯を飲むと温まる」など、日常の飲食物の多くに興味深い薬効が多数伝承されていて、これらの食品もかつて薬として使用されていた歴史があることが容易に推測される。このような薬効が期待できる食品を「薬用食品」と呼ぶと古川氏はいう。
「薬用食品」の成分には、合成医薬品のような作用や作用機序が単純化された薬効は非常に少ないと考えられる。副作用の心配がなく、病気予防や健康維持、また治癒促進や再発防止などに役立ち、多方面で穏やかな効果が期待されることが利点であると古川氏。さらにその原料が栽培作物であれば、多くは生薬に比べ安価かつ大量入手が容易であるとともに、天然医薬品資源としての魅力にも富む。
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