メディカルハーブ、医療応用の可能性
〜統合医療展2013セミナー

2013年2月20日(水)、東京ビッグサイトで、「統合医療展2013」が開催された。同展示会のセミナーから、NPO法人日本メディカルハーブ協会で理事を勤め、現役医師でもある入谷栄一氏の「医療現場におけるメディカルハーブの可能性」について取り上げる。

医療現場におけるメディカルハーブの可能性
入谷 栄一 日扇会第一病院 診療部長 NPO法人日本メディカルハーブ協会 理事

身近なハーブ製品に助けられることが多々ある

入谷氏は現在3つの形態で勤務している。大学病院、月に1、2回のハーブ専門外来、そして最も力を入れているのが訪問診療である。訪問診療は24時間365日、患者から緊急のSOSがある。訪問診療では患者以外の家族を診ることが増えたが、限られた医療用具や薬しか持ち合わせられないことから、入谷氏はハーブを研究するようになったという。

緊急で駆けつける際、手ぶらということもあるが、応急処置で、家庭にあるものが使えることに気づいたという。例えば、庭に咲いているミントの葉やアロエ、冷蔵庫のなかにあるトクホ商品など。もちろん劇的な効果は望めないが、何もしないよりはましで、身近なハーブ製品に助けられることが多々あるという。

ほかにも訪問治療で役立つのは鍼灸とアロマテラピーであると入谷氏。鍼灸はツボや経絡の知識を家族と共有することで、家族が患者を直接「お手当」することに役立ち、コミュニケーションや癒しの効果が非常に高いそうだ。

また、アロマセラピーの人気も高いという。とくに痴呆症の患者さんでも嗅覚は衰えていないことが多い。好きな香りや懐かしさを感じる香りであれば、香りを介してコミュニケーションがスムーズになったり、表情に豊かさが戻ったりすることも少なくない。

在宅の1割はがんの末期患者

日本の医療現場でもハーブは多く使われている。便秘患者にセンナ茶を処方するケースはとくに多い。便秘薬は長期的に服用すると効果が薄れてくる。そこにセンナ茶を差し込むと症状が緩和される。もちろんセンナ茶はドラッグストアでも市販されているため、一般レベルでも使いやすいと入谷氏。入谷氏自身、訪問で効果の高かったものや患者さんから好評であったものは外来でも使いたいと考え、自身のハーブ外来でもミントやハッカなどはとくによく使用するという。

しかし、ハーブの知識は医師よりも一般の人により必要であると感じているそうだ。在宅の1割はがんの末期患者だが、一番重要なのは家族の協力と家族による患者の手当てで、ハーブやアロマテラピーの知識が生きてくると感じているという。

実際、入谷氏自身がこれまで学んできたハーブの知識を一般のレベルで普及させるために、入谷氏は地域医療勉強会にも力を入れるようになったという。月に1回市民講座や勉強会を主催し、地域の参加者の方々に正しいハーブの知識や使い方を学んでいただき、在宅での看護やケアに役立ててもらっているという。 

世界の人口の80%が一次医療でハーブを利用

ハーブは決してオシャレなものでも若い女性だけのものでもない。世界の人口の80%が一次医療の方法としてハーブに頼っている(1985年WHOによる)という事実があり、医療医薬品の25%が植物由来の有効成分(モルフィン、ピンクリスチン等が有名)を含んでいる。

日本でも漢方は100%保険適用で、漢方もハーブといえる。ただ、入谷氏自身はハーブ使用をメインに考えている訳ではなく、3ステップの治療方針に則り必要に応じて使用しているという。

第一段階は通常医療。ハーブより医薬品のほうが圧倒的に効果があるし、効き目も速い。医薬品を使った方が患者の様態が安定するため、基本的には医薬品で対応する。医薬品を使用するチャンスを決して奪ってはいけない。

第二段階として、症状に応じて極力医薬品を減らしていく。例えば、高血圧や不眠などの症状では医薬品が手放せなくなることが多い。しかし、それはいつか必ず副作用を生む。減薬のためにハーブが使えるのであれば、調整的に差し込んでいく。最終の第三段階として、症状が完治したらその症状を安定させ予防の状態を定着させるために、日常的に使えるハーブを紹介するという。

利用しやすいものは「トクホ商品」

ハーブといっても、その広義は「生活に役立つ香りのある植物」で、サラダや緑茶も含まれる。中でも健康の維持増進、疾病の予防、治療などで用いる植物はメディカルハーブといわれる。メディカルハーブというと敷居が高いイメージがあるが、一番身近で利用しやすいのは「トクホ商品」であると入谷氏。

トクホ商品は安全性が担保されているだけでなく、スーパーやコンビニでも手に入れることができる。数カ月後に血圧や体脂肪数値に変化が表れたということも少なくない。 とくに高齢者や男性はメディカルハーブといっても利用するチャンスがほとんどないため、トクホのお茶から知ってもらうのは良いきっかけになるという。

さらにメディカルハーブの良いところは、健康に困っていない人でも利用できる点であるという。例えば、黒烏龍茶をやせ型の人が飲んでもトラブルが生じるわけではない。誰でも気軽に予防的に楽しめるのが最大の利点であると入谷氏。

メディカルハーブの最大の利点は「異病同治」

メディカルハーブの最大の利点は「異病同治」であると入谷氏。「異病同治」とは胃潰瘍、不眠症、高血圧と複数の症状に悩む患者にも一つのハーブで効果を発揮するという意味だ。例えば、原因がストレスであれば、カモミールのお茶を飲んでもらうことで複数の症状が同時に緩和することが少なくないという。

一方、医薬品は一つの症状には一つから複数の医薬品でアプローチしなければならない。あるいは一つの病気に一つの治療。診療科目も異なる。多くの不調の原因がストレスや運動不足、食習慣の乱れであるため、こういうところに根本的にアプローチできる薬品はない。

そのため副作用がなく継続利用もでき、それをきっかけに生活習慣や生活意識が変わるようなハーブは特効薬にはならなくても、現代病の多くに非常に有効ではないかと入谷氏はいう。もちろんハーブは医薬品の代わりにはならない。

しかし、毎日快適に暮らすためのアイテムとしては確実に有効である。なんとなく不調、家族が不調、病院に行くほどではない、今の健康を維持したいという人ほど、積極的にハーブの知識を取り入れ、健康維持に役立てて欲しいとまとめた。


Copyright(C)JAFRA. All rights reserved.