身近なハーブ製品に助けられることが多々ある
入谷氏は現在3つの形態で勤務している。大学病院、月に1、2回のハーブ専門外来、そして最も力を入れているのが訪問診療である。訪問診療は24時間365日、患者から緊急のSOSがある。訪問診療では患者以外の家族を診ることが増えたが、限られた医療用具や薬しか持ち合わせられないことから、入谷氏はハーブを研究するようになったという。
緊急で駆けつける際、手ぶらということもあるが、応急処置で、家庭にあるものが使えることに気づいたという。例えば、庭に咲いているミントの葉やアロエ、冷蔵庫のなかにあるトクホ商品など。もちろん劇的な効果は望めないが、何もしないよりはましで、身近なハーブ製品に助けられることが多々あるという。
ほかにも訪問治療で役立つのは鍼灸とアロマテラピーであると入谷氏。鍼灸はツボや経絡の知識を家族と共有することで、家族が患者を直接「お手当」することに役立ち、コミュニケーションや癒しの効果が非常に高いそうだ。
また、アロマセラピーの人気も高いという。とくに痴呆症の患者さんでも嗅覚は衰えていないことが多い。好きな香りや懐かしさを感じる香りであれば、香りを介してコミュニケーションがスムーズになったり、表情に豊かさが戻ったりすることも少なくない。
在宅の1割はがんの末期患者
日本の医療現場でもハーブは多く使われている。便秘患者にセンナ茶を処方するケースはとくに多い。便秘薬は長期的に服用すると効果が薄れてくる。そこにセンナ茶を差し込むと症状が緩和される。もちろんセンナ茶はドラッグストアでも市販されているため、一般レベルでも使いやすいと入谷氏。入谷氏自身、訪問で効果の高かったものや患者さんから好評であったものは外来でも使いたいと考え、自身のハーブ外来でもミントやハッカなどはとくによく使用するという。
しかし、ハーブの知識は医師よりも一般の人により必要であると感じているそうだ。在宅の1割はがんの末期患者だが、一番重要なのは家族の協力と家族による患者の手当てで、ハーブやアロマテラピーの知識が生きてくると感じているという。
実際、入谷氏自身がこれまで学んできたハーブの知識を一般のレベルで普及させるために、入谷氏は地域医療勉強会にも力を入れるようになったという。月に1回市民講座や勉強会を主催し、地域の参加者の方々に正しいハーブの知識や使い方を学んでいただき、在宅での看護やケアに役立ててもらっているという。
世界の人口の80%が一次医療でハーブを利用
ハーブは決してオシャレなものでも若い女性だけのものでもない。世界の人口の80%が一次医療の方法としてハーブに頼っている(1985年WHOによる)という事実があり、医療医薬品の25%が植物由来の有効成分(モルフィン、ピンクリスチン等が有名)を含んでいる。
日本でも漢方は100%保険適用で、漢方もハーブといえる。ただ、入谷氏自身はハーブ使用をメインに考えている訳ではなく、3ステップの治療方針に則り必要に応じて使用しているという。
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