健康表示の科学的根拠と国際比較
〜「ifia JAPAN 2013」セミナー

2013年5月15日(水)、東京ビッグサイトで「第18回国際食品素材/添加物展・会議(ifia Japan2013)と第11回ヘルスフードエキスポ(HFE JAPAN2013)」が開催された。同展示会のセミナーで、清水俊雄氏(名古屋文理大学健康生活学部フードビジネス学科 教授 フレスコ・ジャパン代表取締役)が「健康表示の科学的根拠と国際比較」と題して講演。コーデックス委員会など世界の健康表示の状況を報告した。

健康表示の科学的根拠と国際比較
名古屋文理大学教授 清水俊雄氏

海外の主要な基準は4つ

日本は食品の健康表示制度として、製品ごとに審査する特定保健用食品制度を1991年に世界で初めて施行している。さらに2001年には規格基準型の栄養機能食品を制度化している。そうした背景から、日本の健康表示制度は世界を代表するものになると期待されてきた。しかし、残念ながら世界に遅れをとっているのが現状と清水氏はいう。

世界の健康表示はどのような状況か、日本の健康表示は今後どう進化すべきか、清水氏は消費者庁や消費者委員会にアドバイスを行ったという。

健康食品の表示制度の国際比較において、対象となる主要な基準は4つ。コーデックス委員会、EU、アメリカ、オーストラリア&ニュージーランドによるものである。

コーデックス表示、国際的合意に

コーデックス委員会では健康表示として「栄養機能表示」、「その他の強調表示」、「疾病リスク低減表示」に関する指針について厳密に規定している。また科学的根拠を示すために「ヒト介入試験の実証を基にすべき」「網羅的な科学的根拠の検証を実施すること」などが採択されている。このコーデックスの考え方が各国で基本的な健康表示のあり方の土台となり、今や国際的合意となっている。

EUでは2007年に「栄養・健康表示法」が制定され、一般機能表示(確立され、異議のない科学的根拠に基づく表示)、新規機能表示(新規の科学的実証に基づく健康表示)、疾病リスク低減表示(疾病のリスク、または疾病の進行とリスクを低減することに関する表示)、小児健康表示(小児の健康に関する表示)の記載が認められている。

実際にその評価はEFSA(欧州食品安全庁)という独立した機関が行っており、健康食品の機能と安全性の両方を厳しく評価している。とくに注目すべきは、日本のトクホよりも広い範囲で健康表示の科学的根拠を承認している点にあるという。

免疫系・ホルモン作用など、200を超える健康表示

例えば、神経系・免疫系・疲労・血液凝固・認識機能・皮膚や粘膜・筋肉や神経・ホルモン作用など、これらに効果的に働きかける成分があっても日本では表示が認められていない。

しかしEUでは幅広い機能性の表記が承認されているため、消費者もあらかじめ機能に期待して商品を購入する。そしてとくに問題は生じず、サプリメントや健康食品市場にますます大きな期待が寄せられている。すでに2013年12月には200を超える健康表示が認められ施行されているという。

アメリカでは保健福祉省がFDAの現状を調査

アメリカには栄養表示教育法があり、どちらかというと健康食品の安全性より食品と病気の関係や食品によるリスクの低減表示に重きが置かれている。例えば、ナトリウムと高血圧、食事由来の脂質とガン、食事由来のコレステロールと動脈性心疾患、あるいはカルシウムによる骨粗鬆症のリスク低減、果物や野菜によるガンのリスク低減など。これらは日本の厚労省にあたるアメリカのFDAが評価を行い随時情報が更新されている。

アメリカではダイエタリーサプリメント健康教育法というものもある。こちらは健康食品の安全性を確保するために、有害事故の報告を義務づけ、食経験の少ない食材による健康食品は安全制評価をより厳しく見直すことなどを定めている。

いずれにせよアメリカの健康食品や表示はFDAが一元管理してきた。しかし、近年はアメリカの保健福祉省がFDAの現状調査を行い、科学的根拠指針への適合が不十分なことや表示の正当性が疑問で消費者をミスリードする可能性があることなど指摘、表示の届出制度をより組織的かつ完全で正確なものにするように求めているという。

オーストラリア、2000年に食品の法的制度を統一

オーストラリア&ニュージーランドは、2000年に食品の法的制度を統一することで合意。2003年に新たな健康表示制度が公表されたが、科学的根拠があること、消費者がミスリードされないことが最重要項目とされ常にアップデートされている。最新版は2013年の1月に公表されたばかりだが、この時点で、既に200を超える健康表示が認証されており、市場は拡大している。

各国において、健康表示の実証にはヒト介入試験に加え、有効成分の同定・定量評価、動物試験におけるメカニズム解明が要求されている。また、健康食品の科学的根拠に関する基本コンセプトは共通項が多いものの、個々の分野での健康表示の実証方法、それに基づく健康表示の範囲については日本とは異なる部分が多い。

日本での健康表示の拡大は重要かつ急務

日本のトクホ商品や栄養機能食品は、科学的にも法的にも合理性が高く、国際的な整合性も十分といえる。日本では現行以上の表示制度は不要と考えているというが、制度の改善は重要と清水氏は指摘する。

とくに健康表示の拡大は重要かつ急務で、疲労回復、免疫改善、肌への健康など現状認められていないが、明らかにその効果を有するものの表示については拡大すべき、いわゆる健康食品(カプセルや錠剤食品)を明確に定義し管理することで消費者の混乱を避ける、消費者教育が最も重要といったことを消費者庁などに提言しているとした。


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